Ep.01 夜鴉 ページ1
夜の首都高を一台の車が駆け抜ける。
月のない闇空に溶け込む黒のポルシェはゆるやかなカーブを描きながら、LEDのきらめく都心へ向かって進み続けている。
「“ヤマアラシ”?」
車内、助手席に収まる銀髪の男が横目に運転席側を見やる。
ハンドルを握るのはサングラスをかけた男。黒い帽子に黒ずくめの服装、夜鴉のごとく闇を好み闇を纏う、異様な風貌の二人組だった。
「へえ、どうやら
「何者だ?」
「情報屋らしいですぜ。国籍、年齢、性別、外見すべて不明。そのくせどこからか嗅ぎ付けて
安直なこった、と運転席の男が鼻で笑う。
「まさかその話……例の件に関係していないとは言わないだろうな」
「もちろんです、組織の一部サーバに侵入を試みた形跡を辿ったら、どうもソイツの仕業らしいんで……今、素性を追わせてます」
「フン……。早いとこ拝ませてもらおうか。他人の縄張りを荒らす命知らずの顔をな」
夜風も月明かりもない完全な密室と男たちの脳裏に、その名はひっそりと焼き付いた。
ヤマアラシ。
素性も居所も知れぬ謎の情報屋。
「……あ、そういやその情報屋、ひとつ妙な噂がありましてね。なんでも金を受け取らないんだとか」
銀髪は返事をしない。だが仕事の進捗によって僅かに機嫌を良くしたのを察して、サングラスは気にもせず続けた。
「じゃあ何を対価にって言うと、決まって甘味を欲しがるそうで。何しろこだわりが強くて、コンビニ菓子でライバル企業の裏帳簿を掴んだ依頼人もいりゃ、高級パティスリーのケーキを跳ねっ返された奴もいるとか……ま、どこまでが真実か分かりゃしませんがね」
「くだらねぇ点に固執する変わり者はどこにでもいるもんだ。厄介なのは、そういう奴らほど腕が立つことだが……」
銀髪の男が口角を上げる。
「組織に仇なす存在は、何者であろうと排除するまで」
────────────
「……そりゃ困ったなあ」
午前三時。苦笑が漏れる。
完全な密室、その堅牢な壁を看破して彼らの音を盗むほどの情報屋は、犯罪うごめくこの街においてもそう何人といない。
「今更逃げても手遅れ感あるし、この際真っ向勝負かな。となると────」
ぷつりと明かりの落ちた黒いモニターに怪しげな薄笑みが写った。
「────うん。そろそろ“彼”に接触してみようか」
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(エモジシクジッタタメサイソウイタシマス) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます!!!!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして!ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい!! (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年11月25日 16時