メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.108 現実的な事情 ページ8

私に言わせれば基本的に「いいとこ取り」をしがちなのが怪盗キッドというキャラクターのように思う。

過去に盗まれていた宝石を本来の持ち主の元へ返したり、ごたごたが片付いた直後にさらっと目的を果たして去ったり。主人公たちが拾いきれなかったモヤッと残る遺恨を義賊が攫って幕を降ろす……っていうのがストーリー的に綺麗だから？

着港直前というのも合理的だが、ひとつの物語として演出の面を考慮するなら、やっぱり────

「(メタ的に、ありそうなのは四日目の夜……)」

「四日目の夜じゃないかな？」

え、と複数人の声が重なる。発言者であるコナンが注目を集めた。

「よ、四日目の夜？ そんなのどこに……」

「もう一回予告状を見てみてよ！ この最初の文章なんだけど……」

驚く警察や関係者に対しコナンは暗号文の解説を始める。いわく、ここの言い回しが不自然だとか、こことここの単語には共通点があるとか、聞いてみると確かに筋は通ってるが……。

……分かるか、そんなん。

正攻法を諦めたのは賢明な判断だった。私には暗号は分からん。

「た、確かに……」

「では予告時間は四日目の夜八時か！」

「すごーい！ コナンくん、すぐ分かっちゃった！」

「た、大したことないよ……ほら、なぞなぞとかちょっとした謎解きって、意外と子供の方が解きやすかったりするし……」

なんだ？ 必要以上に謙遜してるような……。

ちらりと横目でこちらを見るコナンと目が合ったような気がして、すぐに逸らされ、やっと思い当たった。私を気にしての子供アピールか。

……めちゃくちゃ無駄だけど……とは、言えないよなあ……。


そのあと、私たちは準備中のディナー会場を出た。半ば追い払われる形ではあったが。

荷物を置くために一度案内してもらったが、私たちに用意された客室は四部屋。子供たちが男女で二分し、蘭と園子が一部屋を使い、私は個室をもらった。

そういえば、今回は小五郎や阿笠博士が来ていないな。そりゃ依頼でもないのに五日間も探偵事務所を開けたくはないだろうが。博士には少し会ってみたかったな。

でも、まあ、よりによってこの場でなくてもいいか。

「ねえ、これからどうする？」

「そうねー……」

「歩美、プール行きたい！」

「いいですね！」

「そのあと昼飯だな！」

おっと、出航直後にプールと来たか。元気だな。

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