Ep.109 例の組織と ページ9
色味鮮やかなビニール製のボールが青い空に重なって飛び上がった。
「えーいっ!」
掛け声と笑い声、水飛沫が舞う。
ばむん、とまたボールが飛び上がる。ビーチバレーとも言えないボール遊びだが、ルールがなくともそれなりに楽しいものだった。
うわっと声が上がってボールがプールサイドの方へ転がっていく。あらぬ方向へ弾いてしまったらしい。それを取りに行く間、ビーチバレーもどきは中断された。
コナンはボールの行方を見送ってから、なんとなくプールの周りを見渡し、そのまま視線を上にやって、上のデッキからこちらを見下ろすAの姿を捉えた。
「(アイツ、ずっとあの場所から見てるな……)」
太陽を背にして影を落とした表情はハッキリと見て取れない。ただ、プールには入らないと言ってあの場所へ行った彼女は、興味深そうとも退屈そうともなく今までずっとそこにいた。プールサイドにはカフェもパラソルもあるというのに。
歩美たちが大きく手を振ると、Aはそのたび手を振り返した。逆光で目線がどこに向いているかは判然としなかったが。
ある日突然目の前に現れた、例の組織との関係を持つ少女……彼女はいったい何なのだろうか。
一度、訊いたことがあった。
探偵事務所の真下にある、喫茶ポアロのウェイター安室透は黒ずくめの組織に潜入する公安職員、コードネーム「バーボン」は以前、彼女が口にしていた名でもあったため、あるタイミングで直接尋ねたのだった。「AAを知っているか」と。
安室は一見何気なく笑って答えた。
「ああ、知ってるよ」
「えっ……」
「君がその話を持ち出すっていうことは、彼女が探偵だと聞いたんだろう。僕もある事件でたまたま知り合ってね……彼女がどうかしたかい?」
「あの人、例の組織と関係があるんでしょ?」
さらに声を低くして再度尋ねる。
「さあ。知らないな」
「教えてよ、いったいどんな……」
「僕も大したことは知らない。本人が言うには、
違う、とはどういう意味なのか。それを改めて聞く暇は後にはなかった。
ただ……彼女について後から気付いたことがひとつある。
あの時の電話で彼女は確かに言っていた。
────「黒の組織」と。
奴らはあの組織をそう称しはしない。あくまで仮名、便宜上のあだ名のようなものだからだ。
奴ら自身ではなく、奴らを追う者のための。
1657人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時