メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.131 二日目 ページ31

クルーズ生活二日目。

この船旅で初めて迎える朝に乗客は皆どこか浮き足立っていたが、私は朝食の後また写真の男を探しだした。

人探しといってもそこらのクルーや乗客に「この男を知らないか」と聞くわけにはいかない。探されているとターゲットが勘づけば警戒されるからだ。

しかし地道な捜査の甲斐はなく、船内でばったり遭遇した少年探偵団にお昼に誘われて午前中の単独行動はおしまい。

ランチの最中「どこ行ってたの？」と尋ねられ、「まあ、いろいろ」と雑に誤魔化した。

当初の予定と違って楽なのは、一番の要注意人物江戸川コナンへの言い訳を考えなくて済むことだ。特に何か言葉を交わすことはなかったが、あちらはあちらで私の様子を見てそれなりに納得しているようだった。

事件が起きたのは、それからまたしばらく経った午後のことだった。

「見つからないな……。父さんも……写真の男も……」

手すりによりかかって項垂れる。

一隻の船の中でまさかこうも手こずるとは。

鈴木財閥効果で抽選入場の一般客は入れないエリアまで見回ることができたが、それでもまったくそれらしい手がかりはなし。そもそも部屋に篭られていたらおしまいなのだが。

西日が眩しくなってきた。一度部屋に戻るかとデッキを離れ、通路の分岐点でコナンとばったり出会った。

「あ」

「一人？」

「いや……さっきまでアイツらにあちこち連れ回されてたよ。そっちは？」

「私は部屋に戻るとこだけど」

「そんじゃ途中まで一緒だな。オレも部屋まで行くとこだから」

「……」

「……なんだよ」

「取り繕わなくなったなあって」

「そ……そりゃそーだろ。正体が工藤新一だってバレてんのにガキのフリなんかできっかよ！」

「あと切り替えすごいなあとも思う」

「いいから！ 行くぞ！」

大股でずんずんと先へ行く小さな背中に、それ以上何を言うでもなくついて行った。

思ったことを素直に言ったまでだ。それを聞いた側がどう受け止めて解釈するかは私の知ったことじゃない。

けど、やっぱ子供のフリって簡単じゃなさそうだな。

私なら……いや、ありえないことを考えても仕方ない。

広々としたホールからエレベーターに乗り込んで、扉が閉まりきる前に「そういえば」とコナンの方から話しかけてきた。

「ずっと船中調べてたみたいだけど、進展はあったのか？」

私は首を振って「なにも」と答えた。

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