Ep.99 すごく自由だ ページ49
────月の細い夜。
髪を一つにまとめて帽子で隠し、夜闇に溶けるようなワンピースに白のジャケット。絶えず周囲に警戒をしながら、サンダルを履いた足をようやく地につけた。
思いがけず、非常階段を降りるのに時間をかけてしまった。足音を立てては、見張りの人員や夜間の看護師さんにバレる心配があったからだ。
(……あーあ。もうまともに生きちゃいけないな、私)
FBI監視下からの逃亡。それ私の決断だった
おそらく明日から私はFBIの捜索対象になるだろう。だが生憎、経歴も身内も出身も何も無い私は調べれば調べるほど怪しいことこの上ないしお陰でろくに探せもしないハズ。
情報は渡すだけ渡したし、一般人かどうかも怪しい。早いところで本格的な捜索は打ち切られると踏み、こうして逃げる事にしたのだ。
例え証人保護プログラムを受けないにしても放っておいてくれるわけがない。
どうせ監視されて隠れなきゃならないなら、いっそもっと面白い方……赤井さんとこ行っちゃわない？そういう計画です。
私だってできることならコナンくんや哀ちゃんと住みたいわ！でもこの身の上だからいろいろ危ないの！
同居人がいない、複雑な事情がある、一緒にいてもそれなりに安全、いざって時の事態にちゃんと自衛してくれそうなのが、知ってる限り沖矢昴しかいないのだよ。
たぶん神崎でも同じこと考えるよ。気持ち悪いくらい似たもの同士だったから。
都会の街並みは夜でも眩しく輝いている。その輝きから隠れるように、人目を避けて影の道を走った。
それに「面白い」だけじゃなくて、守られてるだけじゃいられない理由が私にはある。ジンは組織幹部にして私にとって最大の仇なのだ。
神崎が消された理由は察しがつく。きっと組織を抜けようとしたんだろう。
籠から出ようと羽ばたいた小烏が、翼をもがれて地に落ちた。
────身勝手なんて今更、こうなったらとことん戦ってやる。私が世界の中心だ。ごめんそれは言いすぎた。
拉致られた時にスマホも財布も何もかも無くした。ついでに家の鍵も。
持ってるのは、病院の売店で買ってきてもらった地図だけ。身一つ、渾身の逃亡。
何も無い。後ろには戻れないし、暗闇に恐ろしいものがいるかもしれない。
それでも今、私は自由だ。
自由を求めるのは、気高い事。それと同時に、浅ましい事。
それでも、欲しいから足掻くのだ。
「自由」とは、「誇り」そのものだから。
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凛 - 絵上手いですね！話も面白いし！ (2018年5月5日 11時) (
レス) id: f39fd1d36e (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - えっ！嘘だろ千世ちゃん！いつも楽しく読ませてもらってます！更新楽しみにしてます！ (2018年2月18日 0時) (レス) id: 26cba6f424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 続きが気になる！ (2018年2月17日 14時) (レス) id: e15058c5ad (このIDを非表示/違反報告)
星鴉(プロフ) - 面白いです！！続きが気になります！！更新楽しみにしてます！ (2018年2月17日 11時) (レス) id: 3edde29704 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 続きが気になります！ (2018年2月16日 10時) (レス) id: 229e64c922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2017年10月18日 11時
