Ep.89 死んでも渡さない ページ39
突如耳を劈く破裂音。
目の前が鮮烈な赤に染まった。
スローモーションに見えたのは、ジンの銀髪が風に揺れるのと、羽虫を見るような腹の立つ目付き。
そして鋭い熱さ、痛み──。
「……っッ、……!!!!」
『名探偵コナン』の中では、メインキャラクターが銃弾を身に受けることなんて珍しくない。言い方はなんだが、通過儀礼のようなものだ。
そしてそんな時ほど展開は熱く燃え上がり、読者もワクワクハラハラしながらページを捲る。
だが、それではあまりに認識が甘かったと・・・嫌でも理解させられた。
(痛い痛い、痛い──!)
脳内が、思考が、乱される。とめどなく溢れる血が、冷静になることを許さない。
肉と骨が鉄の欠片に抉られたのだ。今すぐにでも紐を振りほどき傷口を押さえたい衝動を、手のひらに爪を食いこませてギリギリで耐える。
「フン……その顔は悪かねぇが、どうやら自分の立場をまだ理解してねぇらしい……。
もう一度聞く、死にたくなければ答えろ」
絶望と呼ぶにふさわしい闇が、心を蝕みだす。
本能的、生理的な拒否反応は、どんな契約や約束をも無価値なものにするものだ。
……諦めてしまおうか。そんな思考が一瞬頭をよぎり、そして一度浮かんだ考えはすぐに消えることはない。
嫌だ。こんなに痛いのは嫌だ。でも、約束なんだ。
鉄の擦れる音に、また心臓が跳ねる。
「データはどこだ」
(…あーもう……何だこの状況……私はただの一般人で……!
………
…………いや、"ただの一般人"……ではないか)
……息を吸って、吐き出す。
何、考えてるんだ。
痛みなど忘れろ。
折れるな。裏切るな。
どんなに恐ろしくとも。
……ぎっ、と歯を食いしばった。
「…………痛い。痛いね、すっごく。二度と喰らいたくないや。
……ところであんたはさ、……こんな感覚、経験あるかな?」
自分が不気味にニヤけているのが分かった。
同時にこみ上げる、あの情景と感覚。
「……まず全身に感じるのは、気が狂うみたいな痛み……。動かない指先が徐々に冷たく、血の気が引いていく……
音は遠く意識は朧気に、アスファルトに刻み付いた自分の血を見ながら、最後には痛みも感じなくなって────……
────ってね。そーいう『死』の感覚」
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凛 - 絵上手いですね!話も面白いし! (2018年5月5日 11時) (レス) id: f39fd1d36e (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - えっ!嘘だろ千世ちゃん!いつも楽しく読ませてもらってます!更新楽しみにしてます! (2018年2月18日 0時) (レス) id: 26cba6f424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 続きが気になる! (2018年2月17日 14時) (レス) id: e15058c5ad (このIDを非表示/違反報告)
星鴉(プロフ) - 面白いです!!続きが気になります!!更新楽しみにしてます! (2018年2月17日 11時) (レス) id: 3edde29704 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 続きが気になります! (2018年2月16日 10時) (レス) id: 229e64c922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2017年10月18日 11時