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Ep.87 お陰様で ページ37

……遠くに聞こえるエンジン音で目を覚ます。


目を開けるより早く、私はこの状況をなんとなく理解した。よかった、まだ寝た振りができそう。


……ひとつずつ、確認しよう。

周りに人は……いなさそうだ。気配もない。

手は?……結ばれてはいるが、相当緩い。その気になれば取れてしまいそうだ。ここへ連れてきた安室さんの良心だろうか。でも許さん殴らせろ。

足。……左足が手錠でどこかへ繋がれているらしい。柱か何か……爆弾、とかじゃないよな……?……ない、か。

目隠し、なんかも特になさそうだ。


となれば、あとは場所────








コツン……






硬いコンクリートを打ち鳴らす足音が響いた。




そこで私は、自分が冷たい地面に転がされているのだと理解する。


だが、音の反響や空気からして……室内?大きな倉庫、だろうか……?


だが次の瞬間、そんな思考さえも許さない、絶対的な声色が降り掛かってきた。






「────……目を覚ましたか」





大きく、心臓が鳴る。




その声に聞き覚えがあったかと言われれば、十二分にあったと答えられる。だがその時の私にそれを考える余裕はなかった。


だって、あまりにも絶対的で、恐ろしくて。自分の存在を脅かす天敵に感じる恐怖、きっとそれに一番近いものだった。






(声色だけで、こんなに…………)





指先が震える。



……いや、駄目だ。死なないって、約束した。

このまま黙って殺されるわけには行かない。

大丈夫、だいじょ……ぜんぜん大丈夫ではないけど……





意を決して、目を開いた。


相手を見据えて放つ言葉は、決まっている。









「……お陰様で」




……ああ、我ながら、カッコつけるのに命かけすぎだ。

死にたくないと思うくせして、目先の欲にすぐ目がくらむ。

でもコイツには、こんなふうに言ってやりたかったんだ。前世から、ずっとね。




長い銀髪が月明かりに靡いた。


歪に笑うその男は、温度のない瞳で私を見下ろす。





────黒い外套を纏い、ジンがそこに立っていた。





(……工藤新一が初対面で戦慄した理由が今ならよくわかるわ……)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


文字数が余ったので気だるいAちゃん

http://uranai.nosv.org/img/user/data/0/1/f/01f6720da9bddf23a92e97b47de472a5.jpg

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- 絵上手いですね!話も面白いし! (2018年5月5日 11時) (レス) id: f39fd1d36e (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - えっ!嘘だろ千世ちゃん!いつも楽しく読ませてもらってます!更新楽しみにしてます! (2018年2月18日 0時) (レス) id: 26cba6f424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 続きが気になる! (2018年2月17日 14時) (レス) id: e15058c5ad (このIDを非表示/違反報告)
星鴉(プロフ) - 面白いです!!続きが気になります!!更新楽しみにしてます! (2018年2月17日 11時) (レス) id: 3edde29704 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きが気になります! (2018年2月16日 10時) (レス) id: 229e64c922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2017年10月18日 11時

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