Ep.84 親友に約束 ページ34
「……久しぶりに純粋に楽しかった」
「普段歪んだ生活してるからねぇ……」
「まあ私は嘘つき愉快犯……お前は大犯罪組織の一員だし……ん?」
待て、お前は歪んでるどころじゃねぇ。
「じゃ、また学校で」
駅までついてきてくれた神崎に手を振って、改札を通る。
「……あ、そうだ!Aに渡したい物があるんだった!」
「何?」
ポン、と手を打って鉄柵に駆け寄ってくる。なにかくれるんだろうかと、私も近付いて「渡したい何か」を待った。
しかしプレゼントの代わりに、彼女は早口でこう言った。
「────寝室のタンスの、一番上。
あれはアンタにあげるから」
潜められた声に少し緊張が走る。タンスの一番上?
私が少し困惑していると、次に神崎は人目を気にするようにして何かを私の手に握らせる。それを確認する間もなく両手で包み込まれた。
「……いい、これを、次に私と会う時まで手放さないで。絶対に誰にも奪われないで。そして…………
……死なないでね。お願い」
神崎は、いつもふざけた奴だった。
笑って適当なこと言うし、真面目な顔してボケるし、誰よりもマイペースだ。
そんな神崎千世が、見たことがないくらいの真面目な顔で、ちょっとだけ眉尻を下げて、必死に言うのだ。
今の私はそれくらい危ない……、という事だろうか。
「……分かった。絶対に手放さないし、渡さない。私も、アイツらには殺されない。
親友に約束する」
私も両手で握り返し、そう伝えた。
不安げだった神崎はようやくふにゃりと笑い、手を離す。
なんだかその手が、とても名残惜しそうで。
「うん、頼んだよ相棒!そして親友!」
そう笑って人混みに消える背中に、心の中で祈った。
何事もありませんように。月曜日、無事に生きて神崎に会えますように。
まずは帰って、タンスの一番上を確認しなければ。
握った手をそのままポケットに隠す。不安を払うように早足でホームへと向かった。
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凛 - 絵上手いですね!話も面白いし! (2018年5月5日 11時) (レス) id: f39fd1d36e (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - えっ!嘘だろ千世ちゃん!いつも楽しく読ませてもらってます!更新楽しみにしてます! (2018年2月18日 0時) (レス) id: 26cba6f424 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 続きが気になる! (2018年2月17日 14時) (レス) id: e15058c5ad (このIDを非表示/違反報告)
星鴉(プロフ) - 面白いです!!続きが気になります!!更新楽しみにしてます! (2018年2月17日 11時) (レス) id: 3edde29704 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 続きが気になります! (2018年2月16日 10時) (レス) id: 229e64c922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2017年10月18日 11時