Ep.39 千切られた紙片 ページ39
溜め息を吐くA。目暮がたまりかねて尋ねる。
「それで、残っていたというのはなんの事かね？」
「……これです」
Aが沖矢から手渡されたもの、それは袋に収められた小さな紙切れだった。メモサイズに千切られた紙片には、赤い文字が弱々しく踊っている。カタカナで三文字。
「"オノメ"……って、まさか……」
「お、小野目さん！？」
「なっ……！？ な、なんで……！」
小野目がそう口走ると同時に、女子高生探偵の目が細められ、何も言わずに沖矢を見た。沖矢も何も言わずただ視線を返す。その途端、不服そうに探偵の片眉が引きつった。
「……小野目さん。今『なんで』って言ったけど、どういう意味？」
「ど、どういう意味って、そんなの……」
「これは確かに赤いボールペンであなたの名前が書いてあるけど……実際にはいつ、誰が書いたかなんて分からない。ただのメモかもしれない。なのにどうしてそこまで驚く？ 『なんで……』の続きは？ 何があなたにとって不思議だった？」
「それは……て、てっきり現場から見付かったのかと思って……どうして私の名前が、って……」
「いいや。『なんで文字が消えてないの？』だよね」
「……！」
「ど……どういう意味かね？」
「これはそこの鑑識さんが見つけたものなんだけど……」
そう言って一人の鑑識員を視線で指す。
「付けっぱなしのノートPCの下に滑り込んでいて、実は見つけた時には何も書いてなかった」
「……は？」
「と言っても、私が後から書き足したわけじゃないですよ。元々書いてあったけど見えなかった……CPUの発する熱によって文字が不可視化されていたから」
そう言ってペン立てから一本のボールペンを取り出す。
「被害者が持ってたペン、これと同じものだよね。知ってると思うけど、擦ると文字が消えるペンって六十度の熱でインクが透明になるんだよ。ラバーで擦ると消えるのは摩擦熱。あなたはそれを知ってて、PCの下にこのダイイングメッセージを隠した……冷却ファンが正常に稼働していないPCに負荷を与え続ければゆうに越える温度だからね」
「でも……そんな紙、こっそり捨てればいいんじゃ？」
「小野目さんがこれを見つけたのは、被害者を殺した時じゃない。たぶん沖矢さんが駆けつける寸前……こっそり拾うことができたのはいいけど、捨てるわけにもいかず咄嗟の機転でここに隠した……そんなとこかな」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から！ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…！✨ またよろしくお願いします！ (2021年11月2日 15時) (
レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます！ 応援してます！ (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます！ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます！お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2021年9月7日 21時
