Ep.27 黒い背中 ページ27
………………。
静かな時間が流れる。
Aの視線が横にずれてコナンを見た。表情は変わらない。ただ、僅かに唇を開き、息を吸い込んだ。何か言葉を発する、そう予感したとき────
立ち上がった。
Aはカバンを取ると、急いで場を離れたがるようにベンチを立ったのだ。
逆光になって、顔全体に影がかかる。造形さえぼんやりとしか見て取れない。
「……Aさ────」
「あっ」
話し掛けようとした瞬間、Aが何かに気付いたふうに、コナン達の背後を見て指をさした。反射的に二人が振り向くが、特別注意をひくようなものはなにもない。
コナンと灰原が同時に元の場所へ視線を戻す。
そこに少女の姿はなかった。
「あ……!」
「江戸川くん、あそこ!」
灰原が示す先、雑踏に紛れるようにして黒い背中が見えた。ベンチを離れて追いかける。
Aがこちらを見た気がした。すぐに前を向き、足を早めて高架沿いの道を曲がる。コナンたちもそれを追って曲がり角に追い付いた。
距離はそう離れていない。歩幅に差があると言っても、走ればすぐに追い付く。
────ハズだった。
「え……?」
角の先には、通行人の姿がちらほらと見えるだけだった。
ついさっきまで見ていた、あの後ろ姿がどこにもない。近くの建物に隠れたかと思ったが、どこもシャッターが閉まっているか、中の見える飲食店ばかり。雑居ビルの階段を上ったのか……?
────いや、違う。ひとつの人影が目に留まった。
「……アレだ!」
そう叫ぶと後ろ姿はすぐに角を曲がったが、行先がカーブミラーに写っていた。直後の横道に入ってゆくのが見える。
おそらくその先は路地裏だ。距離的には十分追い付ける。二人はその姿を追って角を曲がり、路地へと侵入した。
しかし、追跡ができたのはそこまでだった。
見失ったのだ。
そこに入ったはずの人影はどこにもなかった。
肩で息をしながら、二人は行き止まりの壁を睨み付ける。
やがて灰原が一言呟いた。
「……やられたわ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
総計100,000hit、お気に入り登録者数1000人突破ありがとうございます!
自己満足ですが、夢主ちゃんのビジュアルイメージを用意させていただきました。▼
見てほしかっただけです。
これからもよろしくお願いします😚
1428人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時