Ep.25 違う世界から ページ25
「……と、まあ。そういうことで」
実にあっけらかんとした態度でAが笑う。そこにはもう、殺人現場で小さく縮こまっていた影は一片たりともない。
初めに会った時抱いたイメージに比べても今の彼女はよっぽど気丈夫で、マイペースで、楽天家にさえ見えていた。
あるいはこれが本来の彼女なのかもしれない。
ベンチに足を組んでリラックスした態度のまま、Aは推理を披露していたときよりもよっぽど楽しそうな声色で、驚くべき事情を語った。
「いろいろと複雑な言い方はできるけど、一番ストレートな表現をしようか。私は、こことは違う世界から来た人間なんだ」
「………………違う世界……」
「あー……ダメだな、これでも……なんて言おうか……」
ぶつぶつと独り言を呟く。
「……それね。その駅、本当にあるんだよ。私のいた世界では。東京都23区内にあるハズなんだ」
「待って。まさかあなたの言う"違う世界"って……」
「東京都……？ ないハズの駅がある……違う"東京"……？」
「まさにその通り。平行世界というか、こことはよく似ているけれど違う世界、違う東京、そこにいたのが私」
「……あなたそれ、本気で言ってないでしょうね？」
灰原の冷静な指摘にAはふっと浅く笑う。機嫌を損ねた様子もなく、さも愉快そうな微笑みだった。
「本気。それに私はこれから、もっと気の狂ったことを言うつもりなんだけど」
「これ以上？ ……勘弁してくれないかしら」
「私がいたあっちの世界から見て、米花町を中心としたこの世界は、ある物語の舞台なんだ」
こめかみを抑えて眉をしかめる灰原の発言をまるっきり無視して、Aは語った。
「そこまで言えば……君たちなら分かるだろ？ 私が出会う前から君たちを、特にコナンくんのことを知っていたのは、私がその物語を読んだことがあるからだってことくらい……」
その演技がかった口調は、彼女の素なのか。その口から語られる言葉のどこまでが冗談なのか。
測れないのは、目元や口元で浮かべるどこまでも穏やかな笑みの中に、壁越しの孤独のような物悲しさが見え隠れしていたからか。
それでも彼女の話には現実味というものがまるで無く、突拍子のない幻想を事実と信じ込み意気揚々と語る、妄想性の精神疾患を抱えた人間だとも考えられなくはない。コナンも灰原も、しばし閉口してその真意を探ろうとした。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から！ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…！✨ またよろしくお願いします！ (2021年11月2日 15時) (
レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます！ 応援してます！ (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます！ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます！お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2021年9月7日 21時
