Ep.24 気付いてくれた ページ24
────参ったな。
二人の子供を交互に見比べて、空を見上げて、考えて……なんの成果も得られず視線を落とすと、やはり二人の子供がいる。幻じゃない。
私の知っている「探偵」というのは、もっと地道で、割と力技で、けれど周到で、そして何よりも普通だ。この世界の探偵に比べれば、そういう仕事をしているだけの普通の人間だった。
仕事柄、高レベルな人間観察が癖になっていたり、尾行をするのにも察するのにも長けていたり、そういうのは分かる。仕事のうちだからだ。
だが痛感した。
ミステリーの中の「探偵」ってやつは、全く違う。何もかもが違う。
少なくとも、捜査対象を理詰めで追い込み真実を白日の元に晒す推理というやつは、私の知る「探偵」の業務には含まれていない。
「……なるほど」
口元が緩んで、笑みが浮かぶ。敢えて抑える必要はない。
江戸川コナンと灰原哀。いつか二人の、相棒としての真髄を見てみたいな。
「……いいよ、おいで。もうすぐそこでしょ」
「え……どこに?」
「どこにって、交番。定期取りに」
当たり前にそう言うと、ぽかんとした間が空いた。忘れてたのか、この子達。
「まあ、信じてもらえるかは分からないけど……精一杯の証拠を見せるよ」
そう言い残して、私は構わず早足に歩を進めた。
二人が着いてこようがどうしようが構わない。私は交番へ落し物を取りに行くだけ。彼らにはそれに立ち会う許可を出しただけ。
私は鼻歌を歌いながら振り返りもしなかった。
今は、ただ楽しくて仕方ないのだ。
だって彼らが────
米花駅前交番。どことなく慇懃な雰囲気を醸す小さな建物に入ると、人の良さそうな中年の警官が私たちを迎え入れた。
落し物の特徴を伝えて、持ってこられたそれを確認して、書類に必要事項を書く。そしてようやく、数時間前に落とした定期が手元へと戻ってきた。
「これが私の通学定期」
陽のもとへ出て、ロータリーの木陰にあるベンチに並んで腰掛け、たった今受けとったものをコナンへ手渡す。灰原さんがそれを覗き込む。
「通学定期って……これ、どこの駅? 路線も駅も聞いたことないのばかりだけど」
「……江戸川くん」
それ以上は口にせず、灰原さんがスマートフォンの画面を提示する。コナンが振り返ってそれを見た。
私も見た。案の定、検索した駅名に見事一致する検索結果は一件もなかった。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時