Ep.たった一つの嘘 ページ22
「……ふ、はは」
低い笑い声がテーブルの上を這った。腕に顔を埋めて肩を震わせるAが、ふふ、と心底おかしそうに顔を上げる。
「ははっ、答えはね、コナンくんだよ。江戸川コナン」
そこにはいつもの笑みがあった。
「彼ってさあ、人を魅了する力があるよね。あと可愛い。可愛すぎる。いやーしかしやっぱ赤井さんには効かないか。ま、コナンくんもそーいうとこあるからなー……」
「……もしかして……」
「酔った……フリ?」
「あはは、でもちょっとキてるっぽいんだよね。頭フワフワする。お酒に酔うってこんな感じなんだ」
「さっきに比べたらほとんどシラフじゃない! っていうかシュウ、気付いてたなら言ってよね!」
「見くびられては困ると言われてしまったんでな」
「もう!」
「はあ……どうやら心配しなくてよさそうですね……」
「お茶淹れてきまーす」
「あ、待って! 一緒に行くわ」
割としっかりした足取りのまま、ジョディ先生とキッチンに並んだ。
思考もある程度正常に働く。ただ、頭がなんとなくフワッと……抗いがたい楽観主義的な傾向が脳を支配している気がした。お酒ってもしかして厳しく規制されないだけでヤバいものなんじゃない?
しかし一口でこれとはな。将来お酒に弱いとカッコつかないから嫌なんだけど。
「あーあ、まさか全部ウソだったなんて……すっかり騙されたわ」
「ホント? 演技の才能あるかもな、私」
「ふふ、それもあるけれど一番はリアリティね」
「リアリティ……?」
「慎重になりすぎてウソが増えるとかえって怪しまれるものでしょ? 私も日本に来てから一時期は偽名を名乗って潜入捜査をしていたのだけれど、ファーストネームはそのまま使ってたわ」
「ああ……咄嗟に名前を呼ばれて反応できないやつのリスクは減りますよね。分かります。私も同じ」
「大変な生活してるのね……」
「でも、私の話のどこにリアリティが?」
ティーバッグ入りのマグカップにお湯を注ぎながら尋ねる。
「それは分からないわ。きっと、あなた以外には」
横目で覗き見る。お手本のようなウインクが弾けた。
「(はは、こりゃバレてるわ……)」
なんとなくの気恥ずかしさを無視するために、マグカップの中を見詰めた。
気付いてるんだろう。私がついた嘘は、あの中でたったひとつだけだったってこと。
ラッキーアイテム
マスク型変声期
ラッキーキャラクター
スコッチ
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popo(プロフ) - 前にこの作品を読ませていただいて、またまた最初から完結まで読んでしまいました!!番外編のゼロの執行人や紺青の拳の続きが見てみたいです!いつまでも待ってます!! (2023年4月9日 8時) (レス) @page3 id: b53f6e36c7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 雪希さん» コメント気付かずごめんなさい!!嬉しいお言葉に重ねて、リクエストありがとうございます♪素直な夢主ちゃんのお話!これは…面白そうですね(笑)(∩´∀`∩)ではでは近いうちに書かせていただきますので、少々お待ちくださいませ! (2020年4月8日 19時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
雪希 - 神作品を三ヶ月ほど見つけれずにいた馬鹿です。今1から読み始めて番外編にたどり着きました。作者様がまだ活動しているならで良いのですが、リクエストいいですか?もし夢主ちゃんが超正直になったらみたいなのお願いします。題名関係なくなってますねすみません。 (2020年1月28日 18時) (レス) id: ee1ea794b0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ノルンさん» わわ、ありがとうございます!お待たせしてすみません…(`-д-;)書きたい時に書くだけの自己満足ものにお付き合い下さって、とてもありがたいです…!ヽ(*´∀`)ノ (2019年7月31日 0時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です!!!待ってました!!!有難うございます!読めて嬉しいです!! (2019年7月30日 23時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2018年7月9日 23時