Ep.152 同じ世界で違う景色 ページ6
通知だけを見つめながら手を震わせていると、不意に頭に温かい重さを感じた。
ふ、と肩の力が抜ける。
見上げると、世良ちゃんは私の頭を軽く撫でて、一番明るい笑顔を見せた。
眩しくて、目映いのに、それはどこか心地よくて。
銀色の反射光やハイウェイの眩しい街灯なんかとは全くの別物────例えるなら、草原に差す陽の光のような。
「大丈夫！」
その言葉だけで、指先はだんだんと体温を取り戻しだす。
震えもまあ、止まった。私はしっかりと頷いて、ディスプレイに目を向ける。
閉じた扉に手をかけるように、アイコンをタップしてフォルダを見る。
件名はなし。
今度は躊躇わずに、メールの本文を開いた。
＿＿
「「「ただいまー！」」」
「世良お姉さん達の分も買ってきたよ！」
「って──……どうしたんですか！？」
売店の袋を提げた子供達が、些か元気すぎる足取りで帰ってきた。彼らは満面に笑みを浮かべていたかと思うと、Aちゃんの様子を見て慌てて周りに駆け寄る。
彼女は泣いていた。
メールを開いたままの画面を胸に押し当てて、静かに涙を流していた。
いったいそのメールには何が記されていたのか。博士やコナン君は知っているかもしれないけど、少なくともボクには知る由もない。
けれど、分かることならある。
事件に巻き込まれて亡くなったという彼女の親友は、最期まで変わらず彼女を信頼していたということだ。
「お姉さん、泣いてるの……？」
「だ、大丈夫か！？」
「……うん……大丈夫……ッ…………」
────だって、あんなに大切そうに抱えてるんだもの。
彼女が一体何者で、その身に何があったのか、いつか知ることのできる機会はあるだろうか。
あのケータイを受け取った時、コナン君は不思議な事を言っていた。
『今、あの子の孤独を救えるのは、この人だけなんだ。
あの子はボクらと同じ世界で、違う景色を見てるから────』
彼が言うのなら、きっとそうなんだろう。実際、ボクもなんとなくそう思う。
ボクらがどれだけ歩み寄ったって、同じ世界を見る事は絶対に叶わないのかもしれない。もういなくなってしまった千世ちゃん以外には。
いつも彼女が嘘をついてたのは、彼女にはずっと虚構の世界が見えていたからなんじゃないか。
それでもボクは思う。
彼女には"嘘つき"でいて欲しい。
思わせ振りなあの笑顔は、底意地悪くて、身勝手で、眩しいほどに楽しそうだったから。
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紅奈虹夢(プロフ) - 泣けた!!!!あのメールは泣いたよぉ!!!!!最高!!!!!! (5月15日 21時) (
レス) @page23 id: 1b7eb8add5 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 死んでしまったから泣きましたよ!でも死んでなくて良かったです。親友のメールも良かった！ (2022年12月30日 23時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
＼(^o^)／ｵﾜﾀ - 神だ。髪が降臨した。感動しすぎて辺りにマリアナ海溝出来ちゃいましたよどうしてくれるんですかマジで。これからもあの二人に幸せが有らんことを。 (2022年5月6日 14時) (レス) @page18 id: 111ab3751f (このIDを非表示/違反報告)
小宮瑠璃 - もうなんなんですか神なんですね(自己解決)。メールの奴で涙腺崩壊しました木っ端微塵に()これから番外編に飛んで行きます。最後に僕にこんな神作を恵んでくださり有難うございました!!!! (2022年4月7日 11時) (レス) @page23 id: dbce0c6b80 (このIDを非表示/違反報告)
しどけ(プロフ) - 何がきっかけかは分からないんですが、4章？になってからたくさん泣きました。すごく感動しました。平凡な感想しか言えないのが申し訳ないです。久しぶりに素敵な作品に出会えたこと、嬉しく思います。今後の執筆活動を陰ながら応援しています！ (2021年4月20日 1時) (レス) id: c7d9a9d9c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2018年5月1日 0時
