【〇〇IのI主役Iは】SECONDｰ我々の日常ｰ Ⅱ【我I々Iだ！】 (ページ28)

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74．赤坊ページ28

｢なんで…大先生が勝手に話すねん｣
｢うん、ごめん｣

ごめんとちゃうやろ。
俺の怒りを全く無視した、相変わらずの飄々とした態度
大先生のことを嫌っているわけではないが…こういうところはどうもいけ好かない。

｢…どこまで、聞いたん｣

こんどはAに尋ねる番だ
彼女はゆっくりと視線を下げて、ポツリと、きょうだいが…倒れてたっていうところ。と零した
あぁ、あそこか。俺が、"鬼"と出会った日。

｢胸糞悪い話やで、それでも聞く？｣

Aは小さくこくりと頷いてくれた
知りたい。と言ってくれた
では話そう。誰も忘れないために。

◇◇

◇◇◇

◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

変に静かで不気味な園内を俺は忍び足で見て回った
どこもかしこも、あるのは｢きょうだい｣だったものだけ。
人なんてどこにも見当たらなかった
嫌な予感がして慌てて踵を返す
今、妹と離れるのは賢明ではなかったかもしれない。

｢…戻ったで｣
｢!! お兄ちゃんっ！｣

妹が隠れている部屋まで戻り、掃除ロッカーを開けばそこにはカタカタと身体をふるわせて見てわかるほど怯える妹の姿が飛び込んできた
慌てて妹の口を塞いで、大丈夫だったのかと問うてみる

｢うん。誰も来てないよ……みんなは？…シスターは？｣

なんて、言えば……＿＿＿＿＿＿？

ｷﾞｨ

｢！？隠れろ！｣
｢えっ？お兄ちゃ、｣

遠くで扉の音が聞こえたと同時に妹を抱えて掃除ロッカーへ自分の体を押し込める
息を殺して、数秒、待つ
すると、こんどはダッダッダと乱暴な足音と大きな鳴き声が聞こえてきた

｢ひぃ…！来ないで、この、この…バケモノ！｣

声の主はシスターだった。
この園で誰よりも優しく、誰よりも厳しい、みんなに愛されるシスター。
ロッカーの小さな穴から外を眺める
まだ赤ん坊のきょうだいを抱えたままこの部屋まで逃げ込んできたシスターは、何かにそう叫ぶと、近くにあった時計や写真､おもちゃを扉の外へ向かって投げた
"何か"はまだ見えない
シスターに抱かれた赤ちゃんはわんわんと泣き喚いている

｢…や……て…おまえらは…………ずっと……たちを、ずっと……｣

ブツブツと呟くような声がだんだん近づいてくる
それに合わせるようにシスターの涙はどんどん目から溢れ出てくる
赤ん坊はまだ泣いている

｢俺達が何したって言うんだ…ｯｯ！！！｣

扉の外から飛び込んできた少し大柄な男がそう叫んだ刹那、赤ん坊の泣き声はぱたりと止んだ

…真っ黒な眼。
そして、真っ赤な髪。