【実I況I者】それはきっと、【キIヨ】II

88．零れる ページ39

謎が謎を呼ぶ、とはまさにこういう事を指すのではないだろうか。
なぜAの家にお仏壇があるのか。
そしてこの女性は誰なのか。
まったくもって理解が追いつかないが、ひとつだけ分かる事と言えば…
Aの笑顔が太陽なら、この人の笑顔はひまわりだ。
……ってなにいってんだ俺。

顔はそっくりで、笑顔の温もりも同じ。
だとしたら彼女は一体……？


バタンっ。


廊下の置くから何やら大きな音がした。
びっくりした俺は思わずふすまを完全に閉じてしまった。
覗き見みたいな形になっちゃったし…それを咎められるのかと不安になりながら。

そーっと音のした方へと向かう。
おそらくここだ、と立ち止まった扉には｢A｣と書かれていた。
ここなら覚えている。
酔っ払ったAをここまで運んだのは紛れもなく俺だから。
ガチャリ…。
なるべく音を立てないように中を伺う。

｢……ぅん………｣

そして先ほどの音の正体がわかった。

｢なんだよお前がベットから落ちた音かよ…ビビるじゃんやめろよ…｣

部屋に失礼して、ベットから落ちたAを抱えてベットへ寝かす。
布団を被せて、ふぅ。とため息を吐いた。
人の気も知らないでコイツは…！

｢…たくっ｣

変な気を起こす前に部屋から出ようとすると、グスッと泣き声が聞こえてきた。
今度はなんだよ…と振り返るとAの目から小さな涙が零れ落ちた。

｢なっなんで泣いて！？｣

｢……ゎ………ちゃ、ん……｣

次々と零れる涙から目が離せなくなる。
不謹慎にも綺麗だと思ってしまう自分がいる。
きっと誰も知らないんだろうな、コイツが夜こうしてキラキラした涙を零していることを。

そっと手を握ってやると、少し微笑んだ気がした。

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