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「…Aちゃん?」




『…あ、えっと…だ、大丈夫です!』




「いや、でも濡れちゃうし。」




『これくらいの雨、走って帰れば平気です!足には自信あるので。失礼します!…さようなら!』




拓弥さんに頭を下げて雨の中に飛び出し、走って走って家まで帰った。




“またね”の挨拶通り、二度も拓弥さんに会えたのに。送ってもらったらきっともっと拓弥さんのこと知れたかもしれないのに。




拓弥さんの近くにいるだけでドキドキしてしまって、一緒に帰るだなんて出来なかった。でも、なんて勿体ないことをしたのだろうか。




一緒にいたいのに、一緒にいられない。自分の気持ちの矛盾さに溜息が出た。




それを機に、なんとなく顔を合わせづらくなってしまい公園の側を通っても東屋に目を向けることはなくなった。




「A、拓弥さんの話しなくなったね。」




『え?…あぁ、うん。』




「なんかあったの?」




『ううん。何もないよ。』




「そっか…。」




拓弥さんにも会わなくなり、部活やバイトが忙しいのか祐基くんたちもお店に来なくなった。




なんだか、拓弥さんに出会う前の平凡な日々に戻ったみたいだ。




『佑亮。明日の大会、頑張ってね。応援しに行く!』




「ほんと!?ありがとう。Aが来てくれたら、僕何百倍も頑張れる気がする!」




『何それ。楽しみにしてる。』




大会当日、体育館のギャラリーで佑亮たちの出番を待った。



会場に入るときに配られたリーフレットをぱらっとめくり、目を通す。



佑亮たちの出番は6番目。




『嘘……』




5番目のチームの学校の、リーダーの名前に村田祐基。何の部活か知らなかったけど、そういえば3人とも同じ部活だって言ってた。



胸が高鳴る。



部員を率いてセンターを張る祐基くんとその両脇に小笠原さんと…………拓弥さん。




パフォーマンスに心惹かれた。踊っている拓弥さんに釘付けだった。



気付いたら頬を伝う涙。パフォーマンスの終了後、人混みをかき分けて拓弥さんを探した。




「拓弥さん、…拓弥さん。……拓弥さん!」




声も虚しく人集りの先にいる拓弥さんには届かなかった。




「A!どうだった!?僕のダンス!」



『ごめんね、佑亮。途中でちょっと気分悪くなっちゃって、…見れなかった。』



「え、大丈夫!?早く帰ろう、今日は。」



『…ありがとう。』



拓弥さんに会いたい。

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作者名: | 作成日時:2018年9月18日 8時

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