ペトリコール (ページ19)

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あれから、祐基くんの優しさに甘えてバイトの終わりに送ってもらうようになった。

相変わらず、小笠原さんと一緒にお店には絡みに来るけど。

「Aちゃん、やっと少し元気になってきた。」

『祐基くんのおかげです。』

「元気のないAちゃん見ると調子狂うんだよね～！」

『私も、真面目な祐基くん見ると調子が狂います。』

たくさん笑い合って、拓弥くんのこと考えなくても済んでいたのに。

「…あ。」

何かに気付いた様子で声を漏らし、祐基くんが目線を送る方向へと同じように目を向けた。

「拓弥～～！」

目線の先にいる拓弥くんの名前を大きな声で呼んだ祐基くんにギョッとして手を掴み、その場から思いっきり走った。

拓弥くんに気付かれていないかな…。

「ちょ！ちょっと！！Aちゃん！どうしたの、急に！」

全速力で走ったことにより、肩で息をするのがやっとだった。

『…呼ばないでください、拓弥くんのこと…。』

「…俺と一緒にいるところ見られたくなかった？」

『そうじゃなくて…』

黙り込んだ私を覗き込む祐基くん。

「拓弥と、なんかあった？」

『…いいえ。』

「拓弥のこと、嫌いになった…？」

嫌いという言葉に反応して、大きく首を横に振った。

『嫌いじゃないです…。むしろ、大好きです！！』

拓弥くんのことを好きだと、初めて他の人に言った。

『私が、一方的に避けてるだけなんです…。』

冷たい風が心の中にも吹いてくるみたいだった。