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神様のイタズラだろうか。それとも、雨の降っていないときに拓弥くんに会ってしまった罰なのだろうか。
この子だれ?と拓弥くんに聞く女の子は、この前ここで拓弥くんと一緒にいた子。
「俺…何かした?何かしたなら、謝る。」
ふるふると首を横に振り、二人に会釈をしてその場を後にした。
「Aちゃん、話がしたい。ここで、待ってるから。」
遠くで聞こえる拓弥くんの声。
諦めようと思っていたのに。
祐基くんにすがって、このまま付き合えば拓弥くんのこと忘れられるかななんてずるいことも考えていたのに。
拓弥くんの声が、優しくて。なのに、切なくて…苦しい。
「A?今日も佑亮くん来てくれたわよ。お部屋に案内してもいい?」
部屋の外から聞こえる母親の声。
あの日から、何だかやる気が起きなくて体調不良だからと学校もバイトも休んだ。
もう一週間。その間に4回は雨が降った。雨が降るたびに拓弥くんのことを思い出す。
「A、大丈夫…?」
『うん…。』
ベッドの近くに座る佑亮と布団を頭から被って答えるわたし。
「体調不良って、本当は嘘でしょ。」
『…ほんとだよ。』
「拓弥さんのこと…でしょ?」
『……違う。』
「今日………、拓弥さんに会ったよ。Aに会いたいって。」
近くにあったぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
「Aのこと心配してた。それに、何かしたのか聞きたいって。自分で考えても分からないから教えて欲しいって。…A、素直になったら?」
『…わたしだって会いたいよ。でも、勇気が出ないの。』
「…あぁ〜もうっ!!だったら、会いに行きなよ!ウジウジしてないで当たって砕けろ!砕けたら僕が慰めてあげるから!」
布団を思い切りめくって、いつまでもグダグダとしているわたしを起こし肩を掴んで今までに聞いたことのないぐらいの早口で捲し立てられた。
その佑亮の行動に開いた口が塞がらない。
乱暴に鞄を持ち、部屋を出るときに一言。
「明日!会いに行くこと!分かった!?ちなみに明日は雨!じゃあね!」
ピシッとドアが閉まり、一気に静かな空間になった。
待ってるって言ってたけど…もしも、もう呆れられて拓弥さんが会ってくれなかったらどうしよう。
そんな不安を抱えたまま、朝を迎えた。
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作者名:ま | 作成日時:2018年9月18日 8時