松尾君と、憂鬱

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やばい遅刻だ。


匠海が我が家に来てゲームを始めたら気づくと深夜になっているんだよいつも。


どう足掻いても遅刻だ、と特に急ぐこともなく家を出れば隣の家からタイミングよく出てくる匠海。お前もか。









「遅刻じゃん」

「お互いね」

「俺はギリギリ遅刻になる予定だから」








ママチャリを出してきてニヤリと笑った。

格好良く言ってるけど遅刻は遅刻だからね。





「乗れば？」


「……じゃあ遠慮なく。あ、でも人に見られるかな」



「こんな時間に学校向かうの俺らくらいでしょ」









匠海のママチャリの荷台に跨る。


やわやわと走り出すが、ふらふらとして恐らく、



「重い」



なんでこうもデリカシーがないかね松尾君といい匠海といい。









匠海は隣の家に住む、幼馴染ってやつだ。


中学くらいから急激に匠海がモテ始めてお互い幼馴染であることを隠した方が楽だと察して他人のふりをしている。



まさか同じ高校に来るとは思わなかったから他人のふりは継続中だ。









「さあがんばれ若者よー」







躊躇うことなく掴んだブレザー。

ん？なんだこの違和感。



目にうつる匠海の髪の毛はサラサラ揺れてるけど、松尾君とはどこか違う。
よくみたら背中も、なんか違う。




「俺に自転車で轢かれたことにして、そのお詫びにAを学校まで乗せてったってどう？遅刻の言い訳と、自転車に乗ってる理由」



「馬鹿じゃないの……」









静かだと思ったらこんなことを真剣に。


よく知ってるけど、どうしようもなく馬鹿だ。









予定通りギリギリ遅刻したけれど、








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「すいません、この人轢いちゃって」


「そうなんです、あいたた……」









なんでこれで誤魔化せるのか教えて誰か。








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