君の心臓の音【Dr.STONE】5.5 (ページ35)

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合理的な千空がそんな事に気づかないなんて変だと思いながらもAはそう尋ねる。

「テメェには先に言っとく」
「えっ？」
「石化装置の充電切れだ」
「！？」

5meterとイバラを最後に石化した時の記憶はあるかと千空は尋ね、Aはコクリと頷いてその時の記憶を思い出す。

「……5meterにしては…光の範囲が狭いですね」

その他にも、電話を使ってラボカーで仕掛けたがその時も反応しなかったと千空は伝える。

「生声じゃないと反応しない訳ではありませんし…ホワイマンさんは合成音でしかも月から……無線声も距離も関係はなさそうですね」

そこは実験しないと分からないが、充電がないのであれば無闇な実験は控えたほうがいい。

「…バッテリーが奇跡的に残ってたとしてもだがな」
「……治療したボクが一番分かってますよ、あの保存方法は決していいものとは言えません」

司の心臓はあの時停止した。
コールドスリープ、医学の用語では〝クライオニクス〟、クライオニクスで復活出来た人間は21世紀ですら存在していない。

しかも今回はただの冷凍保管。
通常なら体液を不凍液と入れ替え、零下196℃の液体窒素で腐敗などによる損壊を防ぐ措置が施される。

「……ボクの視力低下は1回目の石化で回復してました。」

視力の低下の原因は水晶体が硬くなり、柔軟性が失われるから。
そんな繊細な柔軟性までも復元させる力が石化復元力にはあるが、スイカや金狼など生まれ持った斜視弱視の者の視力には復元力は反応しなかった。

「全て治せるわけではない…」

生まれ持ったモノは治せないのであれば、死んでしまった司は復元どころか…石化光線すら反応しない場合がある。
それを千空も予想していたかの様にあぁと呟く。

「もしかして……それを心配してボクに声をかけてくれました?」

狭い船の中で2人で話すのは難しい。
特に千空は指示をする役目上、常に誰がそばにいる。

「…あー？」

もうすぐ日本に到着する焦りから既に作っている世界地図を作れと下手なウソ付き、あまり人の来ない治療室に誘導したのかとAは気づきそう尋ねる。

「……忘れてただけだ」

シラを切る千空にAはクスクスと笑い、顔を覗きに行くと顔を千空に掴まれる。

「いちいち見にくるんじゃねぇ」

頬を潰すように千空に捕まれら「ヒドイ」と唇をタコの様にAは動かし、千空から離れ解放された頬をAは慰める様に摩る。