君の心臓の音【Dr.STONE】3.5 (ページ5)

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「通貨も今後あって困るもんじゃねぇ、通貨を欲しがってる奴にでも渡せば、鉱石でも薬草でも喜んで取りに行ってくれるぞ」

「それはありがたいですが…」

丸々一本いつ食べ切れるか、間食どころか食事を取ることに手を抜いてしまうAにとって自分専用の保存食は困るものだった。

「やべえええええぇ！！なんだこのパン！！頭おかしいぐらいうめぇ！！」

皆が美味しいと言って喜んで食べてる姿を見て、みんなでこれも分ければいいかとAは頂いたシュトーレンをみんなに配ろうとするが…

「数千振りのほんとにまともな現代食だから、なんだか涙が出るね」

シュトーレンの美味しさに感動し涙を浮かべながら食べている羽京に気づきAは手元にあるシュトーレンにもう一度目を向ける。

「どうした？」
「…いえ、もう少し日を置いてから大切に頂きます」
「あぁ、貴様の物だ。好きな奴と食べるなり好きにしろ」

考えていた事がバレているとAは少し顔を赤くさせてシュトーレンをもらった布に隠す様に包み龍水から顔を逸らす。

「シュトーレンは日に日に変化していく味わいを楽しむお菓子だからですっ…」

そう言って誤魔化すAはシュトーレンの美味しさにもう一つ食べる羽京を見て、まるでお菓子を食べている子供の様だと笑みをこぼしてしまう。

一緒に食べる時まであんな顔して食べられてしまったら、一切れずつではなく全部与えたくなってしまうなと、好きな人を喜ばせる事ができるシュトーレンを大切に抱えるAに龍水はフッンと笑う。

「罪な男だ」
「？」

なんの話だと首を傾げるAに龍水はなんでもないと言って頭に手を置く。

重みのある龍水の手に戸惑いながらもなぜ頭に手を置かれたのかAは不思議そうに顔を向ける。

「貴様の瞳はやはり美しいな」

羽京を見つめる時のAの瞳は別格に美しく、本人やいつもその瞳を向けられている羽京にはその美しさが当たり前だと思っているのかと勿体無いと思う反面、自分だけが知っている優越感に龍水は浸っていた。