君の心臓の音【Dr.STONE】3.5 (ページ17)

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懐かしい匂いだけど…何か思い出せないでいると鍋の隣に赤ワインがある事に気づいてあの料理だと思い出す。

「ブフ・ブルギニョンですか？」

日本では別の言い方なのか、キラッとフランソワさんは目を光らせ「フランス出身でしたか」と尋ねられる。

「いえ…父が好んで食べてたので」
「左様でございましたか、失礼ですが…A様は日本語はあまり得意ではございませんか？」
「えっ…や、やっぱり発音とか変ですかっ…」

スッと綺麗なハンカチを差し出される。

「す、すみません…」

涙を拭きながら発音が変だったかもと口元をハンカチで隠してしまう。

「いえ、私の力不足でございますが、お話しされていてとても緊張されている様に見えたので」

「す、すみませんっ…接客用語って言うんですか…？あまり聞き慣れなくて……頭で翻訳するのに少し時間がかかってしまって…」

感情が昂って余計頭が回らなくて…けしてフランソワさんのせいではないと伝える。

英語やロシア語フランス語ならスムーズに話せるが、まだ日本語は正直自信がない。

「左様でございましたが、私の前では差し支えなければ英語やフランス語でお話下さい」
「えっ…でもここは日本だし…」

フランソワさんにこれ以上気を遣わせるのは申し訳ない…

「私も母国語のフランス語を懐かしく感じておりまして、私の話し相手になっていただけると大変嬉しく思います」

ボクに気を遣わせないためか…
フランソワさんは上手い言葉周りをする。
ボクもそんなふうに…人様を思って言葉を選べたらいいのに…

「……」

フランス語で話していたら少しは今の気持ちが紛れるかも…

「じゃあ……お願い…します…」
「Merci mille fois 」