騎士王と姫【炎炎ノ消防隊】 (ページ16)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:107,462 hit

__ピアノの詩人ページ16

____

『今日は何を弾こうかな……』

この不安な気分を変えたい。

なら、弾く曲は一つに決まる────

────ショパンのワルツ第１番変ホ長調、
“華麗なる大円舞曲”。

ショパンが最初に作曲したワルツで、作品番号は18。

かなり初期の作品であるため、華やかな曲想が
特徴だ。

テンポが速い曲でもあるが、そのテンポに
飲まれないようにするのが大事……だと思う。

『……ミスタッチ、多かったな…。』

消防官もだけど、ピアニストにも体力が必要
だよね…。

そう思っていると、横から声が掛かった。

アーサー「華やかな曲だな。」

『…アーサー！』

私はまたしても演奏に夢中になり、アーサーの
来訪に気づいていなかったらしい。

するとアーサーは私の近くに寄り、楽譜を覗き
込んだ。

アーサー「“円舞曲”……って、ワルツか。」

『うん、今日もショパンだよ。』

森羅に言わせると“バカ騎士”なのにワルツは
知ってるんだ…とは、言わなかったけど。

もしかすると、“騎士”だからこそワルツとかの
中世ヨーロッパ的なことを知っているのかも
しれないな。

『この曲は、ワルツ第１番“華麗なる大円舞曲”。
最初に作ったワルツだから華々しいよ。
それとは逆に、晩年のワルツだと……』

今度はワルツ第10番ロ短調、作品番号69-2の
冒頭を弾く。

ショパンが死を悟った時期の曲だ。

アーサー「さっきとは真逆だな…。」

『ショパンって、体が弱いせいであまり情熱的な演奏は出来なかったって言われてる。
でも、その分曲の情緒が豊かというか…。
流石“ピアノの詩人”と呼ばれるだけはあるなって思う。』

私がショパンを好きになった理由がそこにある。

アーサー「……そうだ！“騎士王”の俺に相応しい
ような曲はないのか？」

『えっ？…うーん、“騎士王”か……』

騎士王……アーサー……といえば？

_____