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紅鉤爪/ F.Gk ページ45

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「……っ。」
「それとも追いかけられるのが好きですか。」

冬の夜空の様に一際輝く月の様な瞳だった。永遠の愛を求める捕食者の姿が其処にある。好奇心ばかりが渦巻いて、怒気は感じられ無い。溢れんばかりの慈愛に満ちた仕草で小首を傾げて微笑まれる。紅茶を嗜む令嬢を思わせた。白桃に薄らと色付いた目元がとろり、と夕陽を映す。

「あんまり駄々捏ねると、」
「ひっ、」

飴の様な水光の瞳が3回瞬きすると知らない場所に拉致されていた。硝子の瞳には金の大輪が揺れているのが見える。芒果(マンゴー)の香りがぶわり、と袖から放たれたと思えば、彼が血塗れの口の戸に指を一つ立てた。茶金の爪紅のあしらいは濡れていなかった。

「攫っちまうよ。」
「し、神域。」

透ける様に美しい世界。杏の木の木漏れ日がちらちらと瞬く真夏の世界が広がっている。近くの池には落ちた枝が陽炎と共に浮いていた。甘くじっとりとした夏の神社に私はいる。遠くに竹が騒めく音が時折聞こえて来る。彼の瞳が麦茶の水面の様にゆらゆらと揺れていた。午後の茹る暑さが反射する。

「悪い子は神様が食べちゃうんだぜ。」
「えっと、ガクさん?」

エレガントに瞼を伏せて柔和に微笑んでいたが、その瞳は何処迄も冷たい。桂皮茶(シナモンティー)の豊かな香りと危険味を帯びた感情が手招きしている。杏のごろり、とした血管の塊が転がった様な有機的な瞳孔がずずり、と窄められる。獰猛な表情の筈なのに彼がすると何処か甘くてピュアな印象だ。

「A様は如何しても俺のものにはならないの?」
「え、まあ。」
「だったらしょうがないっすね。無理矢理でも俺のものにさせて貰います。」
「はい?」
「俺は神使でA様からしたらただの狐かもしれないけど、信仰が久しいA様と信仰のある稲荷神社に身を置く俺とどっちが強いか分かりますよね。」

あ、喰われる、と分かった。彼の爪が獣の様に鉤爪に変わり、瞳孔がす、と縦に裂ける。肩を優しく押されて畳にとん、と背中が付いた。神に逆らう柘榴の瞳。明るくて濁りの無い赤が最期に見た景色だった。鉤爪がじゃきり、と肌に当たって柔らかな血が彼を染めてゆく。

「それじゃあ、いただきます。」

通暁リベラル/ Kzh→←紅鉤爪/ F.Gk


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設定タグ:2j3j , ヤンデレ , 短編集   
作品ジャンル:タレント
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鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…?その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト書いてくださりありがとうございます…!実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております! (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
- いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2022年10月24日 19時

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