紅鉤爪/ F.Gk ページ44
×
「ガクさん、離れてください。」
「何故ですか?」
深みのある唇は僅かに紅が剥げている。頬には大胆に食い散らかした跡がべったりと貼り付いている。彼は金の瞳をきゅ、と窄めながら納得行かない様子で尋ねて来た。無垢な表情ですら魅惑的でどぎまぎしてしまう。毛に絡まる血液を物ともせず、がぶがぶと内臓を貪る様子は彼がやはり人間でない事を実感した。
「穢れが移ります。」
「え"。あ、そうですよね。」
違う、そうじゃない。彼のでは無く、私の穢れだ。伸びやかにもくもくと食餌をする程度の穢れなら時間経過で消え失せる。私の穢れは人間の欲によるものだ。神は人間の心に寄り添う存在でもある。癒しを得意としたり、縁を操ったりする神が代表だろうか。
「私の、穢れですよ。」
「A様にそんなものが?」
私の穢れた翼ではもう大空を羽撃く事は叶わない。罪落としの乙女と呼ばれた天馬であったが、自由を手放し此処に囚われたままである。彼は今やもう潰えてしまった主人の穴を埋める様に私に寄り添っているばかりでその気になれば何処にも行ける。
「ええ、私は罪の代行者ですから。」
「でも、それって昔の事ですよね。」
飽食の時代になったお陰で食に関する盗みの罪は随分と癒えたが全てではない。他にも人間には退っ引きならない事情があるのだ。神には些事な事であるが。神が必要なくなる迄私は此処に縛られるだろう。解放は恐らく消失を持って償うことになる。
「怨みは百代を持って償うべしとあります。」
「と、なると粗、償えてませんか?」
ぐぬぬ。此奴目敏い。私は古い神で鎌倉時代を境に信仰が細くなった。つまり令和の時代に生きる子等は百代を過ぎた辺りなのである。今の私に穢れ等無い。古傷の完治は難しいが。自由な精神で生きている伏見狐には無縁の事だろう。彼の図太さには憧れる。
「……そうかもしれませんね。」
「何故、A様は俺を避けるんですか。」
神饌がびたびたと血液を零した。掻開いた瞳孔は百代の執着を纏っている。一度見たら忘れられない印象深い瞳孔がときめきと淡い拍動を訴える。新しく見た彼の表情であった。相手優先の彼が自己表現するのは珍しい。溢れんばかりの愛の輝きが真っ直ぐ真摯に投げかけられる。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
191人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…?その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - リクエスト書いてくださりありがとうございます…!実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております! (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ