【2j3j】通暁リベラル【ヤンデレ】

アルガルの乙女/ D.Devil ページ35

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彼女は靴箱に佇む有名ロゴの入った瓶を見詰めながらアンニュイに溜息を吐いた。タロットカードを振る占い師の様な既に運命等決まっているとでも言いたげな表情だ。ファンタジーなこの状況で少しでも情報が欲しい。流石に悪魔だってタイムリープは新感覚なのだ。控え目な割に華々しく個性的。修道女でもこうはあるまい。

「回葬されている様です。」
「カイソウ？」

鮮烈な黒真珠が僕を射抜く。顔を上げた彼女は上履きを下に落とし、履いていたローファーを地面から持ち上げる。さらり、と髪が流れて春風の最中に揺れた。薄い唇が鈴を転がす様に淡々と告げた。彼女の睫毛の影が幾重にも重なって一度に重い空気を乗せた様な雰囲気を醸し出す。

「はい。死んだら特定の時間に送られる様です。」
「成程？じゃあ、死ななかったら良いの？」

彼女はそういう訳では無いと頭を振った。曰く、彼女は死を願ったそうである。悪魔だったか、神だったか今はそれも分からないが、兎角何かに願いを託したそうだ。所謂禁忌肢という奴である。契約の禁忌とは不老不死、願いを増やす、そして死を願うの3つである。

「いえ、一定で戻ります。」
「なら、Aや僕が此処から出るのは無理だ。」

重ね掛けされている契約は簡単に破る事が出来ない。完遂する迄地獄が続く。彼女は死を願ったのだろう。だからケイヤクシャは彼女の魂から発される精神エネルギーを抽出する事を対価にしている筈だ。唖々、それなら、それなら！

ぽってりと鼻先に魂の味がした。みっちりと絶望の詰まった果実が眼前にある。嗚呼、これはご馳走だ。上級悪魔なら見逃さない筈である。瑞々しく柔い肌に爪を立てた。きらきらと眩い霧の肌は可愛い位の阿呆面を浮かべている。残念だったね、テラリウムは僕の物だ。僕は低俗が何より嫌いだ、と知るが良い。

「なぁ、A。僕に今回は任せてみない？」
「……今回だけですよ。」

顎を爪先で持ち上げて触れるだけの口付を。僕って紳士でしょ？重ねた部分はちりり、と熱を持った。これで契約成立だ。魂は僕の物。唇を離した瞬間、彼女はばたり、と倒れた。髪が真珠を塗した様に煌々としている。奥歯に当たる、ざりっ、とした骨の味。

「さぁて？特級悪魔の底力、魅せてやるよ。」








アルガル→海藻→回葬

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