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散らす涙と咲く笑顔 ページ7

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彼は段ボールを置くと不敵なそれでも優しい笑みで私を置いていった。どうやら向かった先は輝夜君のところ。学ランの右ポケットから、単三乾電池が二本でてくる。彼は輝夜君にアルカリ単三乾電池を手渡すと仲睦まじげに笑った。彼らは少しだけ言葉を交わすと私の方にやって来た。

「A先輩、ありがとうございます。途中で勇儀に行かせましたが、大丈夫だったでしょうか。」

輝夜君は中身が見えない完璧な笑みでこちらに笑い掛けた。隣に立っている彼は苦々しそうに輝夜君を見つめる。それに軽い嫉妬が混ざっているような気がしたが、果たして気のせいだろうか。彼は丁寧に謝辞を述べ、私が段ボールを運んでいた間の活動消化を報告する。抜けたのはたった15分弱だったはずだが、それを疑うほど予定が進んでいる。

「流石、輝夜君。私がするより効率がいいね。」
「いえ、先輩のように細やかな気配りはできませんよ。」

ニコリ。どうしたらそんなに魅力的に笑えるのだろうか。絶対的に上を敬い、下を引っ張り上げる。リーダーとは生徒会長とはこういうものだと現生徒会長である私は思わず圧倒されてしまう。

私と話しながらも放送部員といくつか話し合い、正面のスクリーンの高さを調節する。最後のプロモーションビデオを再生する際に見やすい位置を私に聞きながらセンチ単位で調節していく。背の低い男の子が裏袖から何度も輝夜君の名前を呼び、高さを聞いている。彼はその度に高さを告げてその通りにスクリーンが設置された。

「あ、忘れていたけど輝夜君。コレ。」

セーラー服のポケットを(まさぐ)るとテノヒラサイズのプラスチックの板がコツリと爪に当たる。親指と人差し指で挟んで輝夜君の右手に手渡した。ぶんぶんはそれをいぶかしげに見つめている。輝夜は嬉しそうに赤い色のUSBをこねくり回した。

「何すか、それ。」
「俺がA先輩に手伝って貰っていたものだ。」
「頼まれていた部連予算案集計。とは言っても会計補佐君がほとんど原案は作ってくれていたから纏めるだけだったけれど。」
「はぁ?てか会計長の仕事でしょ!?会計補佐は頑張っていたみたいだけど。」
「いや、流石会長殿です。仕事も早いですね。」
「そういう問題じゃないだろ!」




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作者名:鵯(ひよどり) | 作成日時:2018年3月2日 17時

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