散らす涙と咲く笑顔 ページ6
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彼女は何かを諦めようとしていた。それは吹っ切るという意味合いのものではなく、押し込めて終わりといった後味の悪いものに感じる。憂いを帯びた表情をされるたびに胸がきしきしと痛む。彼女がさっさと輝夜に告白して振られて、すっぱり彼女が輝夜を諦めなければ、この想いに苦しめられることになる。彼女に今、告白しても、私は輝夜が好きだからと断られるだろう。
彼女は輝夜に気があるから俺と付き合わないんじゃない。輝夜を想って、輝夜の身代わりとしてしか付き合えないから断わるのだ。それはどちらも苦しむことになると彼女は分かっている。もちろん、俺も。けれど、俺はその解決策を知っている。それが彼女が輝夜に告白することなのだ。
でも、彼女が告白しないという選択をしたら、
「困るんですよねえ。」
ボソボソと何かを唱えていた彼女の肩が大袈裟に震えた。それと同時に二つ目の階段を降りきり、彼女の歩みも止まる。彼女は暗い表情をしていた。それと同時に希望に縋るような何かが彼女の瞳の中に見える。悩ましげな非常に複雑な表情。彼女の考えていることはいつだって杞憂に終わると彼女は知っているのだろうか。
ボソボソと何かを呟く姿は側から見たら少々、恐怖ものである。もしかしたらホラーよりホラーではなかろうか。だが、彼女の口元と音の高さとイントネーションを見るにどうやら大分マイナスなことを考えているようだ。企画に対しての杞憂ならば全然構わないのだが、それが彼女自身に反映するのは違う。
どうしてこうも彼女は自身を貶めるのだろうか。思わず溜息を吐いてしまう。彼女は俺の溜息を聞いて少しだけ眉を下げた。そうして彼女はまた歩みを再開する。俺も彼女にならって彼女の隣を歩き始めた。
「やっぱり先輩、要領、悪いっすね。」
彼女は相当落ち込んだ表情で
「分かってるもん。」
と俺に返した。あーあ。これは絶対に、
「全く分かってないですね。」
彼女は首を傾げ、俺に真意を聞こうとした。だが、目の前には体育館の扉。パイプ椅子やら何やらを準備している生徒の姿。備品置き場になっている、段ボールの山を目指して2人して運ぶ。こんな賑やかな場所で恋話なんて出来やしない。
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作者名:鵯(ひよどり) | 作成日時:2018年3月2日 17時