散らす涙と咲く笑顔 ページ5
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「ああ、アイツか。任せたんじゃなくて頼まれたんでしょ。」
彼は私の方を見ることなく、前を見据えてそう言った。相変わらず、生徒会部の中でも格別に仲のいい二人。そんな相手私にはいなかったから正直、羨ましい。けど、こんな頼りない私が指揮するより何倍も効率がいい筈だし、地道に段ボールを運ぶ方が私の性にあっている。
「別に関係ないよ。私がやりたいから、やってるだけ。」
私がそう告げると彼は酷く傷ついたような苦虫を潰したような顔をした。ただそれも一瞬のことで、彼はもとの少しだけ不敵な笑みになった。それは彼が心から楽しんで策略を練っているとき特有のもの。まるで秘密基地を製作する子供のようなそんな表情。
「会長、輝夜に早く告白しないんですか?まあ、振られるでしょうけど。」
ああ。出来れば聞いて欲しくなんかなかった。確かに私は輝夜君のことが好きだ。そうしてその思いを告げられずにいる。告白しようとしたあの日、生徒会室の外に漏れてきた会話を偶然聞いてしまったのだ。部連補佐と輝夜君が話しており、内容は確か恋話。
「なな、輝は好きな人、いたりすんの?」
「いや、いない。今は誰とも付き合う気はない。」
「そっか。ま、輝は世界史が恋人みたいなもんだもんね。」
「違いない。」
そう言って仲睦まじげに笑う二人。告白なんてしても振られてしまうことは分かっている。だが、水をあげてゆっくりと育てた恋心が無残に引き千切られるのが怖いのだ。
「分かっているなら聞かないでよ、ぶんぶん。」
告白なんかしても振られるのは承知だ。彼のあの日の言動を振り返るに私のことを何とも思っていない。彼の性格上、恋慕を抱いている相手を隠したりはしない。何なら牽制するために意中の相手の名前を愛おしげに告げただろう。彼はそれに上乗せするように付き合う気はないと明言した。
彼にとっては私は女の子ですらないのだ。おそらく、頼み事を聞いてくれる都合のいい先輩程度なのだろう。それが堪らなく悲しく、悔しかった。意図せずにあのときに彼に傷つけられたのに、また彼のことで傷つかなければならないのか。自分で進んで傷つきに行くなんてよっぽど変人でなければできない。
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作者名:鵯(ひよどり) | 作成日時:2018年3月2日 17時