散らす涙と咲く笑顔 ページ4
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「ぶんぶんは口が悪いね。本当に君が根っからの優男なのか疑ってしまうよ。」
困ったように笑う先輩。俺のことをぶんぶん、なんて言うのは先輩くらいだ。大体の人は勇儀かかざりくん、なのに。そんな自分より年上の筈の女性が何処かあどけなく見えるのはなぜだろう。照れたときに唇をすぼめる仕草とか分かりやすすぎてこっちがときめいてしまう。
「先輩だけっす。俺がこんなこと言うのは」
ごめん。先輩。俺、好きな人に対して敏感になっちゃって、なんて話していいかわからないんだよ。好きな人に意地悪したくなるもんだ、とか会計長は言っていたけれど、アレは本当みたいだ。俺が出来る精一杯のアピールと照れ隠し。不器用だから先輩には伝わっていないかもしれないけど。
「嬉しくないなぁー。」
へらり。誤魔化すような薄っぺらい笑み。また彼女は口をすぼめて。可愛らしく笑う。隠せていると思っていても隠せていないところが更に可愛らしい。そんなところが愛しくて愛しくてたまらない。憎まれ口しか叩けないこの口が、天邪鬼な俺自身が歯痒くて苦々しくてもどかしい。
危なっかしい彼女がつまづかないように。転んで怪我をしたりしないように。彼女の顔に傷なんてつけてしまった暁には俺はどうしたらいいだろうか。おっちょこちょいな君が転んで泣いてしまったら一番に涙を拭いてあげられるように。笑顔にしてあげられるように俺は出来るだけ彼女の隣を彼女の歩調に合わせてゆっくり歩く。
そんな俺の気持ちなんて全く彼女には伝わっていないだろうな、俺のこの反対言葉ばかりの悪戯な口のせいで。
「先輩、先輩の仕事はこれじゃないでしょ。生徒会長は会場内の全指揮と統率でしたよね?段ボールなんか運んで何やってるんすか?」
彼女は酷く曖昧に頼りなさげに笑った。少しだけ憂いを帯びているのはなぜだろう。もしかして彼女を傷つけてしまったのだろうか。
「ああ。会場の指揮かい?輝夜君が請け負ってくれたよ。いや、彼は頼もしいね。来年の引き継ぎも楽かもしれないね。」
流石にそれは俺も苦笑い。やはりアイツには何でもお見通しのようだ。俺に生徒会室にマイク用の乾電池を取りに行かせたのもこういうことなのだろう。
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作者名:鵯(ひよどり) | 作成日時:2018年3月2日 17時