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福は何処に ページ29

※正月企画




「鬱陶しい」


ガヤガヤと煩い鳥居前。目鼻の先なのは分かっているが、何せ人混みが嫌いなたちだ。あの中へ征くのかと思うと気が滅入る。分かっている。半ばは出陣と何ら変わらないことを。このように動きを制限させる服では上手く進めない。

下駄で一歩を踏み出してみる。紅白で色付けされた豪奢な振袖。長ったらしい髪に嫌気が差す。引いた紅が重苦しくて今すぐにでも此処から踵を返したい。何故、自身の櫓に帰るのに此処まで苦労せねばならないのだろうか。

神にご挨拶とはけったいなことだ。けど貴殿らが挨拶しているのはあくまで化け物だぞ。神などおらぬ。とりあえず、鳥居の上に登り、辺りを見渡す。造り上、屋根で囲うように造ってあるので、跳躍しながら屋根を渡っていく。

やっと本殿まで帰れば静かになる。流石に此処まで人が来ることはない。ここの神主も滅多に来ないから。けれど久々に人の子が楽しそうに参拝しているのはいいものだった。

賑やかなのは側から見て入れば楽しいものだ。血筋なのだろうが、正直祭り事は好きだ。けれどその喧騒の一部になるのがどうも苦手だった。何故かは分からない。自身の神社も見たことだし、一度向こうへ帰った方が良さそうだ。

妖界では片割れが狗の世話に手を焼いていると思われる。どうも不器用な彼のことを思い出し、陣を軽く書いていく。札を持てばいいのだろうが、あてにならないので専らこうするのだ。そうして臨界点を開き、そこに向かう。

いつものように潜ればそこは自室。特に変わらぬ自室である。軽く化粧台で顔を確認して見ればいつもと変わらぬ顔。ただ少しだけめかしこんだのが分かるそんな顔。まあ、こんなときにしか白粉なんてはたかないし。

軽く骨格を引っ張っていつもの私らしく。鏡台を後にして外に出る。相変わらずこちらもお祭り騒ぎ。団子を売りさばく花の精がとことこと駆けていく。ところで彼奴は何処だろう。早く行ってやらねば、人混みに呑まれてしまう。

妖特有の嗅覚で彼奴の匂いを辿る。屋根から屋根に縦横無尽に走れば、小さくも精巧な陣を展開して己の身を護っていた。自分の力も制御できないような奴だから心配したが、杞憂だったようだ。

彼奴に差し出された手はほんのりと温かかった。

ココに宣言します!→←閑散とした新年


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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月20日 18時

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