浪漫は待たない ページ3
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静かな店内にラジオの声がよく響く。戦争の近況が声高らかに告げられる。鮮明に事細かに伝えられる内容の真偽は定かではない。天皇陛下のおはすこの大日本帝国が必ずしも清い国ではないのだから。そんなことを言ったら不国民だと罵られ社会から追放されるのは目に見えているからだ。
ちらりと彼を横目で見てみる。海軍と思われる軍服を着ている彼もそのうちに逝ってしまうのだろうか。美しく血の滴る悍ましい戦争へ。その白く清らかな軍服を水蛇に噛ませるのだろうか。
近くの新聞立てに置かれていた今日の朝刊を手に珈琲を啜っている。店内には私と彼しかいないから彼は人目を気にせず、音を立てて珈琲を啜っている。変なところで日本人だからなんだか不思議な感じ。ついでにラジオの内容をもごもごと口の中で転がしているところを見れば三要素を一編に消化できるらしい。器用だなあ。
「海軍だからって相手を殴らない訳ではないですよ。」
いつの間にかネイビーの瞳が新聞から外れてこちらを見つめている。
「そうなんですか？」
彼はにこりと笑って頷いた。それよりどうして私の考えを読み取ったのだろう。彼はさとり妖怪の末裔なのだろうか。
「先ほどから軍服の襟とラジオの方に視線を彷徨わせていらっしゃったので。」
丸わかりですよ、と言いたげなその奥の双眸が冬の光に柔らかく歪んで融けて。彼は楽しそうに笑っていた。
「俺は本当は歩兵志望で近距離戦の方が得意なんですよ」
か弱く美しいお嬢さんに話すような内容ではありませんが。
ついでとばかりに付け足された言葉に棘はなく、少年がカッコつけるような言い草なものだから愛らしさがあっていつもは格好良い彼が可愛らしく見えた。無邪気に哀愁を漂わせる彼が何処と無く貴いものに見えた。
「そう、ですか。今度、赴かれる戦争は大丈夫ですか？」
「軍人にそれを訊くの？」
彼は戯けたようにからから笑ってそう返した。確かに愚問だった。戦争へ赴く軍人の気持ちを無視した質問だったのだから。けれど心配なのは戦争ではない。目の前で幸せそうに珈琲を啜る彼が心配なのだ。ただ、彼が消えてしまうのが不安なだけに過ぎない。私にとって彼とは束の間の浪漫なのだから。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます！流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました！ (2017年12月29日 19時) (
レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか？もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです！……こ、こういうリクエストも平気ですか？ (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鵯
| 作成日時：2017年12月20日 18時
