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浪漫は待たない ページ2

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延々と続く人の波。近代的で洒落た建物。女学生がいそいそと走り去ってしまう。着物を着た人や背広をきた老紳士が馬車の御者に駄賃を渡している。黒い軍服のような制服を着こなした警察が事情聴取のようなものをしている。目先の少年は迷惑そうだ。

ここは駅前の喫茶店で私は今は両親に頼まれて店番、もといお留守番中である。見慣れた景色に一つ欠伸をしてもう一度往来を眺める作業に戻る、はずだったのだが。

からんからんと淑やかにそれでいて主張するようなドアベルが忙しく音を立てる。

ドアから見えたその人は軍服がよく似合うお方。

「いらっしゃいませ。」


定型文を告げれば彼はにこりと笑ってこう言った。

「ごめんね、今日もお邪魔します。」


男性からは女性に頭を下げるなど女々しくて好まれないだろう。ずるずると悪しき文化だけが根強く残る日本は変なところで頑固なのだ。それが裏目に出ることも多いと分かっても尚、直らないのだからこれは性なのだろう。

「いえいえ。丁度、暇を持て余していたので。是非、ごゆっくりどうぞ。」


いつものカウンター席に腰掛ける彼。銀縁眼鏡が彼の生真面目さと聡明さを示しているようでそこは男性なんだな、と思ってしまう。日本人特有の切れ長の瞳の中のネイビーが照明でわずかに透き通る。彼を見ていると大和魂の化身ではないかとたまに思う。彼は珈琲を一杯、注文した。

彼はここ数ヶ月この店に通い続けてくれる立派な常連さんとなりかけていた。こんな小さな店にとっては少人数でも常連さんがいることはありがたい。小さな心の大きな支え。

「こんな時間に珍しいですね、どうされたんですか?」


ことわっておくが、今はお昼前。軍人さんがこんな真っ昼間にここにいるのが不思議なのだ。

「今日はねー、俺、非番なの。暇だからここに来たらAさんに会えるかなあ、って。」


顔に似合わない何処か間延びした口調。けれど低いその声はやはり男性特有のもので素敵だなぁと思ってしまう。

「ご贔屓してくださり、ありがとうございます。」


彼は私の心を掻き乱すのがお上手だ。体の芯が暖かくなって今にも背中に生えた彼のように繊細な羽で飛び上がってしまいそう。

浪漫は待たない→←猫が先かコウモリが先か


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆


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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月20日 18時

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