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消しゴム恋愛成就論 ページ40

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躊躇うことなく、彼は丁寧に消しゴムのカバーをするりと抜いた。

「ああーあ。」


絶体絶命。万事休す。カバーで覆われていた彼の名を刻んだ部分が露わになる。彼はその刻字部分を視認すると、砂時計を横に倒したかのように固まった。

もし、今ここにシャベルはあったとしたら、私はすぐさま、自身を埋める墓穴(はかあな)を掘って、モグラと仲良くワルツを踊っていただろう。私からしたら生き埋めより、今、この静かに流れる時間を体感するほうが拷問なのである。

「あ、の。返して頂けると、」


縫い付けられた唇の糸を無理やり解いて発した言葉は実に情けないものだった。しかし逃避したい気持ちが胸中の大半を満たしていればその掠れた文句が精一杯だ。

「なあ。これは本心か?」


彼は嫌に威厳たっぷりに重い声を発し、こちらを向いた。彼の茶色い目が金に光る夕陽に照らされて血のように真っ赤に反射する。その美しい目は真摯で、私を策に陥れるには十分なものだった。

「えー、っと。好き、じゃなかったら、普通書かないよ、ああ!、もう見るなぁ!」


彼に伝えた言葉は不器用で天邪鬼で強がりだったけれど、恥ずかしさは同じで。言った後にみるみる顔が暑くなる。

顔が恋色に染まっているのを無視するために彼の手中に収められた消しゴムを奪い取る。

「見なかったことにでき」

「るわけないだろう。そこまで間抜けじゃないぞ、俺は。」


私の言葉に被せるように彼はそう言い放った。そうだよね、そこまで人の記憶は簡単に操作出来ないよね。そこから二人して黙り込む。何を考えているかいまいち彼のことは分からない。永遠とも思える沈黙が教室に反響する。ただ心臓が軋む音波を立てるばかりだ。

「お前は、Aは、どうしたい。」


ええ。今すぐ墓穴の中で生き埋めになってしまいたいです。そんな言葉を消化する。というより恥ずかしさが極まって死にそうだ。これが恥ずか死というやつか。

「見なかったことにして欲しいな。うん。流石に公開処刑で嬲り殺されるのは、ちょっと、ね。」


そりゃあ、消しゴムに刻字した名が彼の名で、その消しゴムを見た人間が彼なのだから。恥辱の限りである。そこで私ははた、と気がついた。




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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月20日 18時

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