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深海に血を滴らせ ページ33

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真夜中の出来事だった。俺がちょうどベッドに横になり10分ほどくらい経った頃のように思う。

俺はうとうとして夢中へ旅立つ直前であった。


体に異様な重みを感じたのである。死体より若干軽い重さ。例え方がどうかと思うが、俺はそういう類の職種なのでそれ以外に思いつくものがなかったのだ。

職業柄、嗅覚は敏感だ。俺の部屋に漂うハズのない、濃密な血の匂いとそれに混ざる微かなアンズの香りが鼻をくすぐる。

嗅ぎ慣れた血の匂いはまだ出血して時間が経っていないらしく、腐臭が一切ない。また乾ききっていない血液の状態の血みたいだ。

残念ながら俺の嗅覚ではここまでが限界だ。パーソナルデータはアンズの香りしか抜き取れなかった。


俺はうっすらと目を開ける。バレない程度に開けたつもりだが、目というのはいかんせん、反射しやすい部位だ。いつバレてもおかしくはない。それでもできるかぎり寝たフリをしながら目から得られる情報を整理する。

わずかな視界に小柄な女性が見えた。


頬に返り血をべったりつけている。痛がっていない様子をみると無傷なのか。それとも痛覚を封印しているのか。どっちにしろ、相当強いと見受けられる。


空の雲が晴れたのか月光が一際明るく部屋を照らす。ついでに女性も。

黒髪のポニーテールがぴょこんと跳ねる。なかなか可愛らしい顔をしていた。けれど、俺はこの不法進入者に見覚えがあった。

昼間、食材の買い出しに行った暁に彼女を助けたのだ。通りでヤンキーに絡まれて迷惑そうにしていたから声をかけた。か弱い女性が。とか思って行動したように思う。

月光のおかげで幾分か見やすくなった女性のシルエットはきらりと光る鈍色だった物体を写し出した。

黒く塗装されたのはちょっと刃渡りが長めのナイフ。長さ的には果物ナイフか折りたたみ式の小型ナイフだ。

ここまで観察すると1人の人物にたどり着いた。

アンズの香りと果物ナイフ。夜中に家に忍び込んで家主を暗殺していく殺人鬼。被害者には共通点らしいものがないから快楽殺人とも巷で騒がれている。

「あの、起きてますよね。良かったら抵抗とかどうですか。」


綺麗な鼻濁音で発音された言葉に耳を疑った。




next→

深海に血を滴らせ→←湖面の月を掬う。


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桜花 - 綺麗ですね。どう伝えたらいいのかはわからないんですけど、とても綺麗で、もっともっと読みたくなります。他の作品も覗かせていただきますね。 (2017年12月14日 20時) (レス) id: c1d7847deb (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - とっても面白いですっ!特に、気まぐれ暴風域にようこそが個人的にお気に入りですっ!更新、楽しみに待ってますねっ! (2017年11月14日 8時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年11月4日 2時

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