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銀の糸 ページ10

°



淡い水色の空が白い綿菓子にみるみる飲み込まれて見えなくなった。

青空がなくなるだけでこの世界は殺風景になるんだと思い知らされる。その事実を受け入れたくなくて、自然と急ぎ足になる。


イヤな予感がする。


勘の良い僕のことだ。多分、いやおそらく。違う、十中八九当たっている。正直に当たって欲しくない。

そんな僕の願いは虚しく。


ぽつっ。


どこからともなく生ぬるい湿った風がじめじめと肌にまとわりつく。いつの間にか足下に黒いシミが浮かんでいる。


当たった。雨がくる。


瞬時に天気予報に裏切られた。まるで僕の友だちみたいに。僕をあざ笑うように地面にできたシミは、ひとつ。また、ひとつ。と数を増やした。


まるで僕を攻めるように。


ざーっ。


たくさんの人が押し寄せて一斉に拍手するように地面に流れ、跳ね、踊る、雨。


呆然と立ち尽くしたまま僕は空を仰いだ。

雨の日に天を見上げるのは幼い子どもくらいだ。傘も差さず、ただ空を見上げた。


こうしてこのまま雨を浴び続けたらこの恨みは晴れるだろうか。だったらいい。ずっと浴びていたい。

こうして空を見続けていたら、頰を伝う目から溢れたこの雨もきっと雨に紛れて分からなくなるから。雨のせいにできるから。


少年は立ち尽くしたままただ空を見上げていた。

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作者名: | 作成日時:2017年9月18日 11時

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