検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:3,992 hit

長月兎のお茶会・上 ページ7

°



ピーンポーンと軽快にスキップするようなチャイムが静かなアパートの一室に響き渡る。

ここの住人である私は近くにある鏡で軽く身だしなみを整え、玄関の覗き穴から来客を伺う。


「どちら様でしょうか」

できるだけ不自然にならない声音で招かざる珍客に尋ねる。

相手は訪問販売員らしく、会社名を告げてきた。丁度、雑談相手が欲しかったため、私はその客を中へ通した。


「居間にお通しして申し訳御座いません」

私はいつもと変わらぬ佇まいで彼に謝った。

新人なのか、若干あたふたと落ち着きがなかった。

きょろきょろと部屋を見回して辺りを物色している。…失礼にもほどがある。


物珍しそうに辺りを見回している彼に私はお茶出ししようとメニューをきく。


「今、飲み物を切らしておりまして、紅茶しかないのですが、よろしかったでしょうか」

ウソだ。本当はコーヒーも緑茶もある。

あくまでワザとだ。


タイが原産の、日本ではなかなか手に入らない幻の紅茶をポットに入れ、お湯に出す。

合間に紅茶に合うジャムとレモンを出す。


今日のお茶はマフィンを焼いていたので、それを形良く並べ、机に並べていく。

まるで絵本で見るような豪華なお茶のセットが美しく並べられていた。


丁度、時間になったのでワザと目の前で紅茶を淹れてやる。

販売員はなぜ自分がここに来たのかも忘れ、現実に乏しい光景に見惚れていた。

長月兎のお茶会・下→←白狐の焦燥



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:没ネタ , 14歳未満閲覧注意 , グロテスク有り , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年9月18日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。