ドーナツ程甘くはない ページ42
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べったり鼻につく甘い香り。ドーナツショップでキラキラと目を輝かせる彼女にこっそりため息をつきながら後ろ姿を見守る。
時間をかけてたっぷり3つ。よく食うなぁ。
先に選び終わった俺は彼女のトレイも持ちレジへ。財布から千円札を数枚出して、ドリンクも頼む。店内で食べることも示してレシートを財布へ突っ込んだ。
窓際の席。相手はドーナツのトッピングだったであろうチョコを唇につけながらもきゅもきゅと頬張っている。頼んだオレンジジュースで水分を補給しながら食べる彼女に胸焼けがする。
どうやったらそんなに甘いものが食べられるのだろうか。あまりの甘さに気持ち悪くならないのだろうか。
俺は甘いものが好きではない。
一口かじったドーナツの甘さが口を染める。う。不味い。コーヒーで甘さを喉に流し込む。口の中は幾分かマシになったが、この甘い匂いのせいでコーヒーまで甘くなってしまったように感じる。早く外に出たい。
さっさと食べてしまうと彼女もどうやら食べ終わったようだ。選ぶのは時間かかるのに食うのは一瞬なのな。
「別れよ」
彼女は甘くない。それこそ俺たちの関係もドーナツみたいに甘かったら。
まるでコーヒーみたいな関係。冷めきったコーヒーのように苦い。
ドーナツ程甘くはない。特に恋は。
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作者名:鵯 | 作成日時:2017年9月18日 11時