血被りのナイト ページ39
°
リオンは自分のところまで来た彼らににこやかな笑みを浮かべる。無邪気に何も知らないかのように。
そりゃあ、こんなに物騒な館に生身のしかも美しい少年がいたら警戒するか拍子抜けするかのどちらかだ。そうして彼らを席につかせるのだ。ぼんやりとシャンデリアとキャンドルが広間を照らす。テーブルに並べられた食事の数々。一点の曇りもない銀食器。グラスに注がれた透明な水。
豪華な晩餐会の準備が整っている。けれどその食べ物を口にはしない方がいい。
銀食器は毒を見分けるために使われるが、逆に言えば、毒しか見分けられない。
盛り付けられた肉は人の肉。スープは文字通り人の血。ありとあらゆる食べ物や飲み物が人間から作られているのだ。
今宵の宴に彼はステージに上がる。特別だと言って彼らに注目させるのだ。
何の変哲もない銀食器のナイフ。リオンは肩口にナイフを沿わせると勢いよくめり込ませる。
ぼとりと落ちる右腕。暫し遅れて彼の肩から一気に血が噴き出す。落ちた腕からもホースから水が流れ出るように一気に地面を赤く染めていく。
鮮血。鮮やかだ。本物の赤が辺りに飛び散る。プレーヤーの方たちは嘔吐する人が何人かいた。けれど彼はマリオネットのリオン。
「次はどこにいたしましょうか」
可愛らしく微笑む姿は無垢を通り越し、無慈悲に早変わりしている。けれど操り人形は糸先の主人に操られるもの。リオンがしている行為は何もおかしいことではない。
彼の足が飛び、もう片方の腕も飛ぶ。マリオネットだ。そのくらいの所業はやってのける。
ついでに首も飛ぶ。噴水のように上がる血。そんな小さな体のどこにそんなに多量の血液があったのだろうか。
まだまだ続く宴。まだまだ続く解体。
眼球を抉り出し、耳を削ぐ。歯を抜き、爪を剥ぐ。
骨を取り出し、臓器も抉り出し始める。
腸がだらしなく伸びきり胃がぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、肺と心臓がもぎ、毟り取られる。
けれどリオンは狂ったように笑いながら観客たちにこう言うのだ。
「次はどこにいたしましょうか。」
肉塊が喋るも同然。なのにその声だけは可愛らしく澄んでいるのだ。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鵯 | 作成日時:2017年9月18日 11時