心臓から染め上げて ページ29
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酢酸カーミン液と酢酸オルセイン液。隣の秀才君の解答と自分の解答を見比べる。どちらの解答も赤丸がついていて間違いではないことが分かる。
「あまり見つめないでください」
「恥ずかしいので」
くすりと笑う秀才くん。メガネの黒いフレームを白く骨ばった指が持ち上げる。レンズの奥の瞳は弓なりに細められていて長い睫毛が影を落としている。
あまりにも整いすぎて浮世離れした彼から目が離せなくて、じーっと見つめてしまう。彼は本格的に照れ始め、とうとうテスト用紙で顔を覆ってしまう。あ。見つめすぎちゃいました。
テスト用紙で顔は隠せてもぴょこんと飛び出た耳は真っ赤でそんな愛らしいところを見てしまうとこちらの体温も上昇するというもので。
「ごめんなさい。ちょっとだけ解答、盗み見ちゃいました」
正直に告白するとピクリと彼が動く。ゆっくりと顔からテスト用紙を離す秀才くん。
顔はまだ真っ赤で。
ほんのり色づいた頬はピンク色で。
「酢酸カーミンみたい」
核が染まるように細胞も真っ赤に。それこそ体の核とも言える、心臓から染め上げられたら。
あなたと同じ色になれるのに。なんて。
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作者名:鵯 | 作成日時:2017年9月18日 11時