フローチャートプリズム ページ28
#
「虹ってどうやって作るの。」
率直な疑問を述べる隣のバカ。今さっき理科の時間でやってただろ。おまえは何を聞いていたんだ。
「光を分散させればいいんだろ」
波長によって色というものは分けられる。つまりは屈折と反射の複合で分散できるというものだ。小学生にしては高等的解答例であると自負している。
「つまんない」
「模範解答を覚えて選ぶだけなのになんでそんなに褒められるの」
虚ろな目をした彼女からの疑問。あまりにも頭がいいせいで彼女は使いすぎでネジが吹っ飛んだのだろうか。
違うと信じたいが。それよりここは優等生として答えなければ。
そう思うのに口は開かない。
「この世には決まった答えなんてないよ」
「デウス・エクス・マキナにでも会わない限りは」
くるり。旋回する鉛筆。まるでプロペラのようだ。器用な彼女は親指の甲でくるくると回す。
きっと彼女の頭も同じようにくるくる回るのだろう。羨ましい。
「けれど私たち子供はそうやって演じなければならない」
「平々凡々な毎日を作りあげるために」
子供らしくない言葉だった。黙って彼女の言動に耳を傾ける。
「放射状に延びた可能性」
「けれどその先にあるのは選択した結果だけで」
「まるでプリズムに入った
「一体全体何のために生きているんだろうね」
彼女はこちらを向いていない。ただ自問自答をしているだけだ。愚かで美しい少女に掛ける言葉を持っていないのは確かだった。
「帰ろうか」
雨が止んで雲間から差し込む一筋の光。
「あ。虹」
「虹はね、ホントは輪っかなんだよ」
ぽつりと呟く彼女。きっとその疑問も一周回ってお蔵入り。考えのループに陥る前に今日は仲良く家に帰ろう。
赤いランドセルが雑踏の中に消えて行く。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鵯 | 作成日時:2017年9月18日 11時