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メガネの奥 ページ22

°



あるオフィスの一室。眼下にはキラキラと沈む夜の街並みが空と反転して光っている。

よし。誰もいない。


このところ契約ばかりで正直息抜きできる時間などなかったのだ。誰もいない今、少々うたた寝をしても誰も起こす人などいない。ましてや怒る人も。


俺は資料室の電気を消し、真っ白のソファで一眠りすることにした。

もちろん、カムフラージュ用の資料も目の前のデスクに広げて。




どのくらい眠っていただろう。カツカツとヒールを軽快に鳴らす音で意識がこちらに戻ってくる。あくまでも寝たふりだ、寝たふり。

まぶたの上からでも影ができるのがわかる。おそらく先輩だろう。俺の名前を上げ調子で呼ぶ姿は仕事以外でしか見れない愛らしさがある。

「お疲れ様」

たった一言。顔なんか見なくても今のあなたの気持ちはわかる。労ってくれてありがとう。


さて、あまり意地悪がすぎるのもよくない。そろそろ種明かしをしなければ。


うっすらと。ゆったりと。まぶたをあげる。


驚きに染まるあなたの表情。こんなにも無垢な顔をして。なんかちょっと新鮮だ。


どうやらズレたメガネを戻そうとしてくれていたらしい。この位置からだと先輩の鎖骨がチラチラリと見えて気持ちが高ぶる。


カチンと固まる先輩。見つめあって30秒。


「先輩。メガネ、どうします?」

なんてちょっと意地悪なことを聞けば、クスリと笑って俺のお気に入りの紫のメガネが離れていく。


「今は、見ないで。きっと頬が赤いから」

なんて。



先輩。イケメンすぎです。

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作者名: | 作成日時:2017年9月18日 11時

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