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苺一絵 ページ17

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ベタベタと油絵に載せた絵の具のように規則性があって。目に毒毒しい絵本のような鮮烈な鮮やかさにくらくらとめまいがする。ガヤガヤと生活音のノイズをBGMに優雅に紅茶をすする。


猫舌ではないことに感謝をしながら熱々の液体を喉に流し込む。程よい苦味が喉を通って口の中の甘さが消えてなくなる。


ファミレスの店内で優雅に喫茶デート。向かいの相手は破顔した笑顔でこちらを見つめる。白いカップに入れられた真っ黒な液体。相手はブラックコーヒーを嗜んでいるらしい。お向かい相手はチョコレートケーキをオーダーしたらしく、ふんわりと挟まれたチョコ生クリームがスポンジの飾りの役割を果たしている。

自分の手元にあるは、ショートケーキ。



やっぱり私はやなやつだ。

生クリームでどれだけ着飾ったって所詮上に乗っている一つの苺がなければショートケーキとはわからない。そんなもの。

ならば私は苺の乗らないショートケーキだ。私に価値はない。現に苺は私の目の前にいる。肩肘をついて厚いベールに覆われた憂鬱な灰色の空を眺めながら甘味を堪能する男の人。


たったそれだけでも一枚の絵画のように雰囲気があり、美しかった。


けれどそれも食べるまでのこと。飾られた大きな苺も食べる人がいなければ残り物。最悪生ゴミとなる。

私は周りのスポンジ生地と生クリームを胃に収めて貧相な皿には大きな苺だけが乗っている。

私は寸分の狂いもなく、ためらいもなく、フォークを苺に刺す。口の中に含んだとき、切れ長のシャープな目から澄んだ瞳がちらりとこちらを見る。


ぐしゃり。何かが潰れる。口の中に広がる甘酸っぱい香り。どろどろとして甘いのにどこか切ない。理由はわかっている。私が惨めだからだ。


端に置いた紅茶に涙のエキスを一滴。それは私がとうの昔に忘れ去った純情なプライド。


ナンパした彼とのお茶会。もう2度とは会わぬ絵画のように美しい彼。


藁の中で朽ち果てたひっそりとした思いは静かに落ちる。



さよなら。一期一会。

ー裏話ー→←埃を被った段ボールの箱庭にて



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作者名: | 作成日時:2017年9月18日 11時

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