花の子供は笑い合う/ zm ページ38
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彼の見ている世界と私の見ている世界が違うものであることなど分かり切っていた。どれだけ歯痒くとも私は彼の世界を見る事など叶わない。可能性として幻覚剤を飲めばもしかしたら彼の世界と類似した景色を見る事が出来るかもしれないが、それはただ類似しているだけ。それは彼の世界では無い。彼は今日も廃れた美しい花畑で私に笑顔を向ける。
「A、ほら、花冠！」
「ゾムは器用だね。上手。」
私は咄嗟に彼を傷付けない言葉を選んで彼に返した。それが正しいかどうかだなんてもう分からなくなってしまっていた。彼は私に対して花冠だと認識している物体を笑顔で掲げる。それはどう見ても人間の毛髪で所々べったりと鮮血に濡れている。
「せやろ。これ、Aにやるで。」
「ありがとう。でもお花さん達に申し訳ないからゾムが持ってるといいよ。」
何処とも知らぬ女の髪など悍しくて受け取る事が出来なかった。彼は私の言葉に一瞬だけ悲しそうな顔をした後、断崖絶壁であるこの崖の上に花冠を置いた。夕陽が彼の背を照らしていて、何処か夢幻的な光景だ。彼は血に染まった指先を掲げて女の頭を手繰り寄せた。既に首から下は見当たらない。彼が真下の泡沫に放り込んだのかもしれない。散々遊んだのか、それとも死後から時間が経過したのか女の舌があり得ない長さででろりと唇からはみ出ていた。既に焦点を結ばない瞳は片方空洞になっており、彼が抉り出したことが窺える。彼は女を手繰り寄せると残った片目に指を掛けた。
「ほら、宝石！綺麗やろ？」
「とても綺麗だね。」
人の眼球が宝石に見えている彼と視覚的価値観や情報は共有出来そうに無かった。彼は乾燥し始めた血糊の付着した人差し指をそのまま女の眼窩に差し入れた。あまりにグロテスクなその光景に口内がからからと渇く。ぐ、と無理矢理喉を鳴らせば、きゅっと締まる様な痛みが駆け抜ける。
「これ、Aにやる！」
「嬉しいな。でもこんなに綺麗なもの貰えないよ。折角だからゾムが持ってて。」
彼はまたもや残念そうな表情を浮かべた。彼の知能は酷く幼い。それ故に私が物品を受け取らないことを不服に感じたのだろう。抉り取った眼球をそのまま背後に放り投げた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - ちゆさん» コメント賜り誠に恐縮でございます。お気に召された様で何よりと存じます。あの頃が懐かしく感じますね。こちらこそ長きに渡りご愛顧ありがとうございます。これからも細々と書き連ねて参りますので、是非続編にもお越しくださればと思います。 (2020年7月20日 16時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ちゆ(プロフ) - コメント失礼致します。措定エートスに感銘を受けました。鵯さまの文章の中でも特にお気に入りです。わたしの一番のお気に入りは陥穽モラトリアムなのですが、それと並ぶ程です。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。これからも陰ながら応援しております。 (2020年7月20日 14時) (レス) id: 6c19e7d8ad (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - ぴよりさん» リクエストありがとうございました。御眼鏡に適った様で何よりと存じます。またのご閲覧お待ち申し上げております。 (2020年5月30日 8時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ぴより - 早速読ませていただきました！鵯さまの書かれる、美しさの中に闇を感じる文が本当に大好きです！ありがとうございました！ (2020年5月29日 23時) (レス) id: b50fafb894 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - ぴよりさん» ご愛顧いただきありがとうございます。前作のは中々難産でした為、今回も大幅に時間を取らせて頂きますことご理解ください。リクエスト承りました。気長にお待ち下さいませ。 (2020年5月28日 8時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
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