20話 ページ21
「俺がこの世界に足を踏み入れたのは、今のお前と同じ…高2の時だ」
ソファの後ろにいた左馬刻は、Aの命令で隣に座っている。
そして、いつもより若干低いトーンで話すAの話をただ聞くことに専念した。
「父親がロクデナシでなぁ、外に女と借金作って出ていっちまった。
俺はそれを返すために色んなバイト掛け持ちして、本当に金がねぇ時は自身を売って男に飢えてる女を抱いたり…なんてしてた。
でも足りない。だから俺は男にも、て声をかけ始めた。んで、初めて声掛けたその相手が今の組長でよぉ。
何故か気に入られて、そのままヤクザになった。
何度も反抗した…俺には守らなきゃならねぇ家族がいるんだ……てな。
そしたら、
俺が借金の返済もお前の家族の安全も保証してやる。だから俺の組に入れ、断ったら体バラして売り飛ばす。
なーんて言われてなぁ。
有無を言わさず入る以外の選択肢が無かった。
ま、俺には弟もいたし…それで借金も安定した生活もってなるなら俺の身一つどうなってもいいかって思った」
少し状況は違うが、まるで今の俺の話を聞いているみたいだ。
と、左馬刻は思った。
けれど、なら何故Aの母親は自 殺をしてしまったのか…更に疑問が深まる。
「…けど、耐えられなかったんだろぉなぁ……」
Aは背もたれに首を預け、上を向いた顔を己の手で覆う。
「縁を切ったとはいえ、息子の1人がヤクザで……聞いた話だと、近所で浮いてたらしい。
人の噂ってーのはすげぇな……簡単に命を奪うことが出来る」
「……弟さんは?」
「……さぁな、もう10年近く会ってねぇ」
「そ、ですか」
話も終わり、暫く沈黙が続く。
それを破ったのはAだった。
「左馬刻、家帰んなくて大丈夫か」
「……」
何も答えない左馬刻に、Aは少し苛立ちを覚えた。
「…テメェの親父、放置して平気なのかよ。妹と母親に」
「今日は、帰ってこねぇと思います。昨日帰ってきてたんで…」
「……ふーん」
少しだけ震えている左馬刻に気がついたA。恐らくは無理矢理された時でも思い出しているのだろうか、そう思ったら無意識に体が動いていた。
「左馬刻、こっち向け」
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洸牙(プロフ) - はちゃめちゃに最高でした………。設定が神がかってる上に文章も素敵で 、本気で感動しました。左馬刻様が可哀想可愛いすぎて情緒めちゃくちゃです。この2人のその後とかを考えて、勝手に泣きそうになったりしてます。これからの作品も楽しみにしてます! (2022年2月9日 23時) (レス) id: 5f00eb5dfd (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!!!!もう大好き!!他の作品も、見てみようと思います。お疲れ様でした。 (2021年12月21日 1時) (レス) @page45 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
ロト(プロフ) - スマホに変えてて慣れるのに時間かかってたらいつの間にか完結していた…だと…!?完結おめでとうございます!!読む度に語彙力が蒸発するくらい萌えてました。読み終わった今はクラッカーを100回くらいパァンってしたい気分です!! (2020年4月30日 1時) (レス) id: f40d6209a3 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - 亜星可也さん» コメントありがとうございます。無事完結できて良かったです。そしてご心配して下さり、ありがとうございます。亜星可也様も、体調等お気をつけください。 (2020年4月6日 18時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
亜星可也(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう本当に左馬刻が尊すぎて最高でした!!最近コロナが本当に危ないので感染しないように十分にお気を付けください!!! (2020年4月6日 18時) (レス) id: 430d859c05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心春 | 作成日時:2020年2月18日 14時