壱 ページ37
「……しかし、記憶を消さなくても良かったのではないか…?」
海坊主が遠慮がちにそう質問する。
説教しようと来たものの、狐の様子を見てその気が滅入ったのだろうか。
「消さないと、辛いじゃろ」
「辛い?」
「あぁ……‘愛しているのに愛さない’なんて、そんなのは苦しいだけじゃ。ならばいっそ、記憶を消して‘元々愛する人なんていない’ってことにすれば、楽じゃろう?」
「……お互いに想いは通じ合っているのに、酷だな…」
「人と妖なんて、そんなもんじゃろうて」
散りゆく桜を眺めながら、狐は煙管を吹かした。
そしてその煙は、花弁とともに風に吹かれて行く。
「……さて、そろそろ社に帰るか」
「そう、だな」
海坊主は何処か納得いっていない様子だが、狐は敢えてそれに触れず横を素通りする。
「前のように、共にいることは出来ないのか…?」
海坊主がポツリ…と呟いたが、それが狐に届くことは無かった。
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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時