玖 ページ24
木の幹に寄りかかり、二人寄り添って座る。
月夜に輝く桜は花弁を散らし、幻想的な世界を作り出す。
｢……その後、ここに皆を埋めてたのじゃ。
でもまさか桜が咲くとは思わんかった｣
｢もしかしたら、プレゼントかもしれないな｣
｢…ぷれ……?｣
｢贈り物の事だよ。
貴方の妻が、最後のプレゼントにーって桜を咲かせたのかも…?｣
｢なるほどのぉ…｣
狐は嬉しそうに笑った。
俺はその笑顔を見て、嬉しい気持ちと虚しい気持ちになる。
嫉妬はもうしない。そう決めた。
話を聞いて、‘愛の重さが違う’と分かったから。
でも、俺が狐を好きな気持ちは変わらない。
その重さも変わらない。
だから……結局は虚しさが残るのだ。
｢ここ、落ち着くな｣
｢……そうか?｣
｢うん｣
何故か狐が、複雑そうな顔をする。
ここは愛する妻が眠る場所だから、落ち着くと言われて嫌だったのだろうか。
｢……………お前さんの…、どうか……場所で…｣
｢え?何て言いました?｣
｢ん、んー……いや、ただの独り言じゃ。気にしなくて良い｣
｢そうですか?｣
｢あぁ…。
それよりも少し喉が渇いたのぉ。朧車に言って、水を取らせてくるから少し待っててくれ｣
｢…はい｣
そう言って朧車を待機させている村の離れまで行ってしまった。
一人取り残された俺は、枝の隙間から見える星空を眺めることにした。
星座は詳しくない。
けれど、美しいことは分かる。
『本当に、ここから見える星空は美しいですよね』
｢っ…誰だ!!｣
突然聞こえた声に、俺は立ち上がり警戒する。
『驚かせてしまい、申し訳ありません。
でも、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ』
声の主は木の後ろから現れた。
狐が着ているような上質な着物を身にまとい、俺と似たような髪色をしている男。
顔は…桜が丁度重なっており見えない。
｢貴方は、誰です…?｣
『それは、言えない。
けれど、貴方に害を及ぼすようなことはしない』
｢……分かりました｣
男はふふっと笑い、ありがとうございますと言って少し頭を下げた。
それだけでは、顔は見えなかった。
『俺がこうして貴方の前に現れたのは、伝えたいことがあるからです』
｢伝えたいこと?｣
『はい、時間が無いので簡潔に言います。
まず、沢山笑顔を見せること。
沢山手料理を食べてもらうこと。
沢山思い出を作ること。
そして、あの人を沢山愛すること。
俺は(前世では)、叶えられなかった。
だから今度は俺が(今世では)叶えて…!』
舞い上がる花びらと共に消えたその男。
俺は狐が戻ってくるまで、男の面影を探した。
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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします！！！！！！ぜひ続きを書いてください！ (2023年4月16日 14時) (
レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます！体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：心春 | 作成日時：2020年1月12日 9時
