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チュンチュンと鳴く雀の声に、目が覚めた。
障子越しに差し込む朝日は柔らかく、目を開けることに苦労はしない。

「ん……朝…?」

俺は起き上がり、何だかぼうっとする頭を抑える。まだ体調が万全ではないのだろうか。
それでも、ずっと横になっているわけにはいかない。
俺は布団から出て、取り敢えず乾いた喉を潤そうと台所に向かった。

「あれ、いい匂い…」

香ってくる匂いの先には鍋が置いてあり、俺はその蓋を開けた。
そこにはお粥が入っていて、俺は首を傾げる。

「お粥なんて、作ったか?」

記憶にない。
いや、風邪のせいで忘れているだけなのかもしれない。
お粥を作って、眠った可能性もある。

いや、その前に…

「……なんで、風邪引いたんだっけ…?」

忘れそうにないことを、忘れてしまった。
思い出そうとするが、頭が重くて上手く働かない。
けれど、きっと仕事のし過ぎか寝不足だろう。俺はそう思うことにした。

コンロに火をつけ、お粥を温める。
グツグツと音を立て、香ってくる匂いが強くなった。
程よい所で火を止め、食べる分だけを茶碗によそって茶の間に向かう。

一人、いただきますと言ってお粥を口に運ぶ。

そこで俺は驚いた。
そのお粥はものすごく美味しくて、俺が作ったものには思えなかったからだ。

「……誰か、作ってくれた…?」

そんな事を呟く。
そういえば、こんなにここは‘静か’だっただろうか…。

もっと賑やかで、もっと複数で食事をしていたような気がする。けれど、一人暮らしの俺にはそんな相手は居ない。

「…本格的に、やばいな」

今回の風邪は酷い。
俺は何度口に運んでも飽きないその味を堪能し、再び布団に戻った。

寝て、早く治そう。そうすればいつも通りに戻る。
俺はそう思い、その日は殆ど寝て過ごした。

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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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