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「む、今日も来ていたのか。有栖川」

「あ、理鶯さん!」

そしてこの男、海坊主もほぼ毎日と言っていいほど家に来る。
今もその道中だったのだろう。

「ふっ、微笑ましいな」

海坊主は俺たちを見て微笑んだ。
先程のギャンブラーのような、下品な揶揄いでは無いので素直に礼を言う。

すると、不公平だの、贔屓だのとギャンブラーが騒ぐ。

「つか、理鶯さんの持ってるそれって…」

「兎だ。活きのいいのが捕獲できたのでな、皆で兎鍋でも、と思って持ってきた」

耳を捕まれ、ぷらーんと持ち上げられた兎。まだ生きていて、鼻がヒクヒクしていた。

「ほぅ、兎か……最近は食べていないからのぉ、良いのではないか?」

「理鶯さんが作るなら間違いなく美味いっすね!」

狐とギャンブラーは食べる気満々だ。
けれど俺は…

「返してください!山に!!
こんっな可愛い子を!食べるなんて!!非人道的です!!!」

海坊主の手から兎を奪い取り、己の腕の中に抱える。すると黒くつぶらな瞳が俺を映す。

可愛い。

「はぁっ…かわっ………!こんっなに、こんっっなに可愛い子を食べるなんて……!」

「そんな大袈裟な」

「…す、すまない。まさか兎が嫌いだったとは………少し待っててくれ、ならば猪を狩ってこよう」

「いや、理鶯さん多分そういうのじゃないっす」

再び山に出掛けようとする海坊主をギャンブラーが止める。
狐はそれを呆れた様子で見ているだけだ。

「………この時代では、兎は食わんのか?」

「食べないですよ!
むしろ、なんで食べられるんです!?こんなに愛らしいのに…」

「昔は、普通のことじゃった」

「あ…」

変わったこと……これも、変わったことだ。

狐は、昔と今を比べることが多くなった。
それは、‘小生から俺になった’頃から。

どうしてそんなに比べたがるのか。
いや、自然とそうなってしまうのかもしれない。

でも、狐が昔と今とを比べる度に俺は…。

「………今、誰を見てますか…?」

俺を通して、他の誰かを見ているのではと…そんな気がしてならない。

肆→←弐



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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